【長編小説】『夢のリユニオン』第8章「やり直しのはじまり」

星空

▼概要・目次はこちらをご覧ください▼ 【長編小説】『夢のリユニオン』概要・目次  時刻は午前二時を迎えていた。次の日の午前中に予定のある者ならば、大抵が床に就く時間だ。同窓会が始まって四時間。皆が揃いだした時間を考慮すると、実質二時間ほどが経過したということになる。中にはもちろん今の自分の置かれた状態を話すことに気の進まない者もいたが、それ以外に彼らが話せることはなかった。今では靄(もや)のかかっ…続きを読む

分類も分析もできないものの力『赤い長靴』江國香織

赤い長靴

言葉にならない本能的な「うずき」を感じたとき、江國香織の文章というのはとても心地良い。 そこには確かに文章としての物語があるのだけれど、それは「文章にまとまっている」というのとは全然違う読感がある。 文章にまとめたり、うまく一般化したり、それを分析したりするのとは程遠い感覚的な安堵感が、そこにはある。 『赤い長靴』は、ある夫婦を描いた連作短編集だ。 出て来る二人は同じなのだけれど、全体として「起承…続きを読む

【長編小説】『夢のリユニオン』第7章「ただ『今』を生きるものたち」

星空

▼概要・目次はこちらをご覧ください▼ 【長編小説】『夢のリユニオン』概要・目次 甲林は、いつもよりも少し早い午後十時半に起きだした。夢の中での理由としては相沢を寝かせてやるためであり、現実の理由としては高校生になった娘の実香が眠る時間になったからだった。 実香は紛れもなく典型的な長女気質であり、五人きょうだいの一番上としてあらゆることを自分の中だけで解決する癖がついていた。 甲林は、そんな実香が感…続きを読む

ある種の物事というのは口に出してはいけない『ダンス・ダンス・ダンス』村上春樹

ダンス・ダンス・ダンス

『羊をめぐる冒険』で村上春樹がストーリーテラーとしてのスタイルを獲得したのは有名な話だけれど、『ダンス・ダンス・ダンス』はそれに続く話となる。 奇妙な出来事に否応なしに巻き込まれて、とある羊を追い求めて東京から北海道まで行くことになった主人公の、その後のお話。   「その後」とはいえ、本作では羊の話はそれほど重要なポイントとして出てはこない。 あくまで「かつて解決されることを求めていたことがら」と…続きを読む

【長編小説】『夢のリユニオン』第6章(3)「実際に目の前に現れるものとしての過去」

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▼概要・目次はこちらをご覧ください▼ 【長編小説】『夢のリユニオン』概要・目次  がらがらがら、と前方のドアが開いて一気に十人くらいの人間がなだれ込んできた。振り向きざまに時計を見ると十一時三十分だった。いい時刻だ。相沢はその中に、かつての友人であったとの姿を認めた。助かった、と相沢は思った。これで少なくとも、距離の測りきれないぎこちない会話を続ける必要はなくなった。  「よう新堂、なっちゃん。久…続きを読む