【長編小説】『夢のリユニオン』第14章(3)「民と国家の利害の一致としての存在」

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▼概要・目次はこちらをご覧ください▼ 【長編小説】『夢のリユニオン』概要・目次  「ふ、ふじいちゃん。タンマタンマ」なんとか立ち上がった松永は、息を荒くして拳で大谷を殴り続けている藤井を止めようとした。女の子とは思えないほどの力を大谷に向け、彼女の体はぶるぶると震えている。それでも、高校生になる男女の体は、しっかりと力の差がついていた。松永は藤井を後ろから抱え込む。  「離して! 離してよ、えいち…続きを読む

【長編小説】『夢のリユニオン』第14章(2)「民と国家の利害の一致としての存在」

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▼概要・目次はこちらをご覧ください▼ 【長編小説】『夢のリユニオン』概要・目次  「働いてない。もう、ずっと」やっぱりいい、と松永が言いかけるほんの一瞬前に、大谷が口を開いた。  「就職して、一年半で行けなくなって、そこからずっと」  ぽつり、ぽつりと、大谷は吐き出すように話した。まるでそこら中に散らばっている紙の切れ端を拾い集めて、少しずつ読み上げていくように。  「うん」静かに、聞いているとい…続きを読む

【長編小説】『夢のリユニオン』第14章(1)「民と国家の利害の一致としての存在」

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▼概要・目次はこちらをご覧ください▼ 【長編小説】『夢のリユニオン』概要・目次  「シュン、お前待てって」  一方で、松永と大谷は薄暗い校舎で追いかけっこをしていた。興奮した大谷の駆ける音は静かな校舎に大きく響いており、松永は容易に彼を追うことができた。成績では大谷の足元にも及ばずとも、足の速さでは負けない。松永は、高校二年生に戻った自分の体が思い通りに動くのを、楽しんでさえいた。今は廊下を走って…続きを読む

【長編小説】『夢のリユニオン』第13章「あちら側に行くことは、こちら側に居続けることの否定である」

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▼概要・目次はこちらをご覧ください▼ 【長編小説】『夢のリユニオン』概要・目次  「あと二人だよ」教室の後ろに三つ出っ張った机の一番左に座っていた女が立ち上がり、前へ進み出た。例の太った女だった。高校生のころの彼女は、陰気で髪が長く、常にうっすらと汗ばんでおり、彼女がそばを通るたびにつん、と鼻を突くすえた臭いがした。彼女の体型と顔の合計点は、確かに美人のそれの十分の一にも満たないものだった。けれど…続きを読む

軽やかで、乾いている『泣かない子供』江國香織

泣かない子供

『赤い長靴』に引き続き、江國香織モードから抜け出せない。 この人の文章は、一見してとてもふわふわしているように見える。 自然体で、マイペースで、自由奔放で繊細。 けれど同時に、ものすごくきりっとしていて、太くしなやかな芯を持っている。 だから、知らないあいだに彼女の紡ぐ文章から「現実的な生きる力」みたいなものをもらっている気がするのだ。 『泣かない子供』はエッセイなのだけれど、彼女の日常というのは…続きを読む