『蒲公英草紙―常野物語/恩田陸』

不思議な能力を持つ「常野一族」のシリーズ第2弾。

ちなみに第1弾は『光の帝国 常野物語』

この一族には、いくつかの掟がある。
・権力を持ってはいけない
・一族は固まって暮らさない
などなど

人間にはみな、ものを予知したり記憶したりそんなふうな能力が備わっているはずなのだが、あまり表立って出てくることはない。
それは、おそらく我々が生きていくために脳が制御していることもあるのだろう。

常野の人々は、そんな能力が突出している。

今回の『蒲公英草紙』に出てくるのは、各地を転々と旅し、常野に血縁のある人々の記憶を「しまう」一家。
ある村に存在する、槇村という名家。
彼らは、その昔常野の人に恩を受けてから、その一族が訪れるとできる限りのもてなしをするという決まりになっていた。
その槇村の病弱な末っ子娘の話し相手として屋敷に出入りする女の子の目線から描かれている。

恩田陸の作品を読む度に、彼女の引き出しの多さに恐れおののく。
この人の言葉は、無限だ。
そう感じる。

ただの「不思議物語」ではない。
能力を持つということ。
常野であれ、そうでない者であれ。

それに従うことと、自分の心。

運命。必然。
意志。

いちばん心に刺さった一文を紹介したい。

「私は運命を信じています。でも、運命は変わります。運命を持っているだけではどうにもなりません。こちらも歩いていかなければならない。これが私の信条ですね」

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