読書感想文

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読んだ端から筋を忘れるし、たくさん読んでいるわけでもないし、好きな本も偏っている。 そんなわたしの、とてもとても個人的な読書体験を書き留めています。

人生に意味はない『孤独の発明』ポール・オースター

ポール・オースターの作品には、比較的若い(と言っても青年から壮年までさまざまだけれど)男性が主人公となる。 そしてその多くが、世界を真正面から眺めてはいない。 しかしそのことこそが、彼らの語る言葉、まとう空気を真実に近いものにする。 おそらくは、(それは十分確からしく)、我々の目にする世界は多くの場合見たままのものではないのだ。 『孤独の発明』は、自伝ではない。 作家自身が訳者に話したように。 「 […]

少年たちは、大人になることを拒む。『さよなら僕の夏』レイ・ブラッドベリ

さよなら僕の夏

胸が締め付けられるほど、美しい小説に出会える瞬間がある。 どうやってそんな小説に出会うか? インターネットで検索してみるのも良い。 友人に聞いたり、読書コミュニティに参加したり、アプリケーションサービスを使って人工知能に勧めてもらうのもいい。 けれどやっぱり一番うれしいのは、図書館や本屋で何気なく手に取った小説が素晴らしかったときだ。 なぜ手に取ったのだろう? と後であらためて考えてみても、その理 […]

新しい文学なんて、もう作れないんじゃないか『カラマーゾフの兄弟』

久々に再読。 とにかく読みにくい、というのは相変わらずで、でも頑張って上巻の最後のほうまでたどり着くと、もう途中ではやめられなくなる。 宗教、 人間という生き物の本質、 我々の逃れられない宿命、 高尚な葛藤、 低俗な罪深さ、 それらのあいだに横たわる線がいかに曖昧でほどけやすいか。 正義と正義の衝突、 冤罪、 真理と真実と事実。 ドストエフスキーは、その読みにくさから、『カラマーゾフの兄弟』しか読 […]

Just two men’s opinion(s)『翻訳夜話』村上春樹 柴田元幸

翻訳夜話

翻訳に「色」は必要なのか? あるいはそれは、好むと好まざるとにかかわらずついてしまうものなのか? 大切なのは、 忠実であることか、あるいは偏った愛情を持つことか? それらは相反するのか? 翻訳という、自分をある程度消しながら、言葉も文化も歴史も違う国の物語をほとんど再構築するような形で置き換える仕事。 言語を専門に研究する東大教授の柴田元幸氏。 若くからとにかくたくさんのテキストに触れて、自身でも […]

十八歳というのは恐ろしい年齢である。『ムーン・パレス』ポール・オースター

ネオン

ポール・オースターという人の作品は、いわゆる海外文学の中で、どちらかというと「即物的」な部類に入る方ではないかと思う。 それでいて、起こった事実を忠実に書き留めている無個性的なところはまるでなく、ポール・オースターはポール・オースターらしく存在感を放っている。 彼の文章はいわば、しっかりとしたストーリー性を持った純文学と言えるかもしれない。 自分が十代の頃に好きだった日本の作家たちが書いていたよう […]

過去は未来よりも曖昧なのかもしれない『一九八四年』ジョージ・オーウェル

1984年

人生の然るべきときが来るまで、読まずに置いておきたい「名作」がいくつかある。 あるいはそれらのうちいくつかは手に取ることのないまま、わたしの人生は終えられてしまうのかもしれない。 けれどあくまでわたしの場合、本というものは、特にそれが時代の検証を受けてなお残っているものであればあるほど、より正しい状態でページを開きたいと思ってしまうものだ。 そんな作品のひとつに、『一九八四年』があった。 第二次世 […]

リアリティの薄らぎ『ガラスの街』ポール・オースター

ニューヨーク

ポール・オースターといえば、なぜかミステリー・推理小説家だというイメージがないだろうか。 そしてわたしは個人的に、「このジャンル」が苦手である。 有名だとはわかっちゃいたけど、『幻影の書』のあとでなかなか手が出せずにいた。 しかし今回、偶然古本屋で見かけた『ガラスの街』を手に取るに至り、ほとんど一息に読んでしまった。 小説というのには大抵の場合、準備運動が許される。 つまり、読み始めていよいよ物語 […]

現実は記憶になる運命を『アメリカの鱒釣り』リチャード・ブローティガン

アメリカの鱒釣り

物語は、広い意味の芸術で、芸術というのはそれはもう、見る人の主観に委ねられる。 評価というものそれ自体が意味を持たないこともある。 時代が、時間だけが評価を与える場合もある。 けれど、本物というのはたぶん、時間軸や大衆のきまぐれなどはそっちのけで、 圧倒的にそこに存在しているのだろう。 リチャード・ブローティガンの選ぶ言葉、文章の積み方は、わたしたちの自然な予測を毎秒のように裏切る。 だから、すら […]

普遍性や現実なんてお呼びじゃない『象の消滅』村上春樹

象の消滅

物語とは、「例えば」の連続だ。 どこかでこんなふうに言っていたのは、村上春樹氏だっただろうか。 その「例えば」は、繰り返されるうちに現実を離れていく。 そしてその物語は、現実よりも真実味を帯びてわたしたちに語りかけてくるのだ。 『象の消滅』は、アメリカのとある出版社の編集者が一人で選んだ作品たちらしく、それが逆輸入されて同じ構成で出版されたのが本書だ。 どれもこれも、「ザ・初期の村上春樹の短編」と […]

想像力の権利を取り返せ『タイタンの妖女』カート・ヴォネガット・ジュニア

タイタンの妖女

久しぶりに。 本当に久しぶりに。 魂が興奮して、心臓が鼓動する本に出会った。 カート・ヴォネガット(・ジュニア)。 名前だけは聴いたことがあったのだけれど、読む機会がこれまでなかった。 『タイタンの妖女』は、著者の初期の作品である。 まず最初に。 この本を本屋さんで見つけようと思ったら、おそらく「海外作家」か、「SF」のカテゴリーで見つけることになるだろうと思う。 なぜなら、物語の内容はとても「未 […]

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