ファーストクラスとビジネスクラスとエコノミークラスくらいの違いしかない。[言葉の切れ端002]

「君がごく普通のサラリーマンであろうと、演歌歌手であろうと、アメリカの大統領であろうと、乞食であろうと、そんなことはどうだってよろしい」と声は言った。

「そんなものは、ファーストクラスとビジネスクラスとエコノミークラスくらいの違いしかない。行き着く先も同じ、速さも同じ、揺れ方も同じだ」

「でも、到着するまでの快適さは随分違うんじゃないですか。優越感とか」僕は無駄な質問だとは思ったけれど、とにかく聞いてみた。

「はは」声は実に可笑しそうに笑った。

「どこでもぐっすり眠れる丈夫な体と、目的地を目的とする心さえあれば、スーツケースの中でさえ快適だ。それが宗教の役割なのだよ、つまり」

「つまり?」僕は残ったウイスキーを飲んだ。
からん。と氷がグラスに当たった。

「思想ではなく、有限な資本に価値をつけた、君たち人類のはまった落とし穴だ」

投稿者プロフィール

ちひろ
ことば、文字、文章。
それはとても恐ろしいものでもあり、うんと心強い味方でもある。

文字はマンガに劣り、写真は動画に劣ると言われる時代で、文字の集積だけがもたらしてくれる「情報」以上の無限の想像のための余白。
そんな文字の持つ力に心躍る方がいたら、ぜひ友達になってください。
私はそんな友達を見つけるために、物書きをしているのです。

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冬に元気をなくす母親と、影の薄い善良なフィンランド人の父親を持ち、ぼくは彼らの経営する瀬戸内市の小さなリゾートホテルで暮らしていた。ある時なんの前触れもなしに、ぼくにとって唯一の友達であったソウタが姿を消した。学校に行くことをやめ、代わり映えのしない平穏な日々を過ごすぼくの生活に、少しずつ影が落ちはじめる。

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