希望と絶望の割合[言葉の切れ端012]

目を覚ますと、頭の血管を岩が通過していくような感覚に襲われた。

視界の中に誰かの爪先。
私は絡まってドロドロに溶けた記憶から、どうにか読み取れそうなものを見つけて組み合わせる。

昨日はユリの誕生日だったのだ。
彼女は私たち四人グループで最後に二十一歳を迎えた。

私以外の三人は、一般企業に就職活動をしている。

音を立てないように起き上がると、背中がきしんだ。
アカネの1DKのこたつの上には、申し訳程度に残ったケーキと、ティッシュペーパーに油を吸われたポテトチップスが横たわっている。

昨日の大騒ぎの名残りが、部屋のあちらこちらに残っていた。

こうして迎える朝に、多少なりとも希望を見出だせるのは、いったいいくつまでなんだろうと私は思う。

四十歳の私たちが、今日と同じように明け方まで騒いだ後、そこには希望と絶望がどれくらいの割合で存在するのだろう。

書いた人

ちひろ
ことば、文字、文章。
それはとても恐ろしいものでもあり、うんと心強い味方でもある。

文字はマンガに劣り、写真は動画に劣ると言われる時代で、文字の集積だけがもたらしてくれる「情報」以上の無限の想像のための余白。
そんな文字の持つ力に心躍る方がいたら、ぜひ友達になってください。
私はそんな友達を見つけるために、物書きをしているのです。

新刊発売中!

できることなら、十四歳という年齢はすっとばしてしまえるのがいい。
冬に元気をなくす母親と、影の薄い善良なフィンランド人の父親を持ち、ぼくは彼らの経営する瀬戸内市の小さなリゾートホテルで暮らしていた。ある時なんの前触れもなしに、ぼくにとって唯一の友達であったソウタが姿を消した。学校に行くことをやめ、代わり映えのしない平穏な日々を過ごすぼくの生活に、少しずつ影が落ちはじめる。

『レモンドロップの形をした長い前置き』
著者:田中千尋
販売形態:電子書籍、ペーパーバック(紙の書籍でお届け。POD=プリントオンデマンドを利用)
販売価格:電子書籍450円(※Kindle Unlimitedをご利用の方は無料で読めます)、ペーパーバック2,420円

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。