雲と綿と夢と拘置所[言葉の切れ端013]

陽だまりにちょうどすっぽりと体が収まるように、身を横たえた。
家の中で唯一窓から光が差し込む場所だ。

ぼんやりと空を眺めると、そこにある一つの高層ビルだけが僕と世界のつながりになった。

僕は雲に浮かび、地上からただひとつここまで届くビルを眺めているのだ。
雲の上は、拘置所からの眺めに少し似ていた。

額から頭頂にかけて、分厚い綿を詰め込まれたような感覚があった。
それが眠気だと気付く前に、僕は眠っていた。

その強烈さとは裏腹に眠りは何度も分断され、僕は短く害のない夢をいくつも見た。
目を覚ましたときには忘れているくらいの内容だ。

そしてその害のなさが、僕をやるせなくさせた。夢の名残りを体から追い出してしまうために、僕は大きくため息をついた。

投稿者プロフィール

ちひろ
ことば、文字、文章。
それはとても恐ろしいものでもあり、うんと心強い味方でもある。

文字はマンガに劣り、写真は動画に劣ると言われる時代で、文字の集積だけがもたらしてくれる「情報」以上の無限の想像のための余白。
そんな文字の持つ力に心躍る方がいたら、ぜひ友達になってください。
私はそんな友達を見つけるために、物書きをしているのです。

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冬に元気をなくす母親と、影の薄い善良なフィンランド人の父親を持ち、ぼくは彼らの経営する瀬戸内市の小さなリゾートホテルで暮らしていた。ある時なんの前触れもなしに、ぼくにとって唯一の友達であったソウタが姿を消した。学校に行くことをやめ、代わり映えのしない平穏な日々を過ごすぼくの生活に、少しずつ影が落ちはじめる。

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