種の保存としての孤独[言葉の切れ端020]

種の保存としての孤独[言葉の切れ端020]

「孤独とは何だ」とそれは言った。
いや、「言った」という表現が正しいのかどうか僕にはわからない。
それには、僕らが口と称するパーツは付いていないようだったからだ。

「説明することはできない」僕は言った。
「人はそれを感じたとき、それが孤独であることがわかる」

「それは愉快なものか?」それは興味がなさそうに言った。

「取り立てて愉快というものでもない」

「ではなぜそんなものが存在するのだ?」

「幸福を自覚するため。あるいは種の保存のため」

「随分と不便な暮らしのように聞こえるが」それは顔をしかめた。
それには顔も目もなかったから、僕は憶測でそれの表情を推測し、だいたいのところで目を合わせた。

「まぁ、便利というわけではない」僕は言いながら、先ほど置いてきた左手首の切断面を眺める。

ここから血が抜け切ったら、次の門をくぐれるのだ。