種の保存としての孤独[言葉の切れ端020]
- 2019.07.26
- 言葉の切れ端
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「孤独とは何だ」とそれは言った。
いや、「言った」という表現が正しいのかどうか僕にはわからない。
それには、僕らが口と称するパーツは付いていないようだったからだ。
「説明することはできない」僕は言った。
「人はそれを感じたとき、それが孤独であることがわかる」
「それは愉快なものか?」それは興味がなさそうに言った。
「取り立てて愉快というものでもない」
「ではなぜそんなものが存在するのだ?」
「幸福を自覚するため。あるいは種の保存のため」
「随分と不便な暮らしのように聞こえるが」それは顔をしかめた。
それには顔も目もなかったから、僕は憶測でそれの表情を推測し、だいたいのところで目を合わせた。
「まぁ、便利というわけではない」僕は言いながら、先ほど置いてきた左手首の切断面を眺める。
ここから血が抜け切ったら、次の門をくぐれるのだ。
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