たばこを吸わないひと[言葉の切れ端039]

たばこを吸わないひと[言葉の切れ端039]

「百合根はどんな人ならいいわけ」あたしはブラックが入ったカップを片手で持ち上げ、舌の上で冷ましながら飲む。

「たばこを吸わないひと」彼女は間髪を入れず、両手をカフェラテの入ったマグで温めながら言う。

「そんなのいくらでもいるじゃない。このスタバの半分の男がたばこなんて吸わないわよ、いまどき」

「ただ吸わないだけじゃ、ダメなのよ」百合根は心底残念そうに、まるでそれが自分の落ち度でもあるみたいに申し訳なさそうに言う。

「たばこを吸う人や行為を嫌悪しているわけでもなく、お金や健康のためってわけでもなく、ただ吸わない人がいいの」

「どう違うわけ」あたしは仕方がなく、今度は水に口をつける。

「私がたばこは吸いますかって聞くと、その人はいいえとだけ答えるの。それでどうして吸わないんですかって聞くと、少し黙ってからこう言うの。うーん、どうしてだろう。そんなの考えてもみなかったなって。そういう人がいいの」

なるほど、この子に恋人ができないわけだ。