パラサイト・シングル[言葉の切れ端050]

カフェ

「ま、いわゆるパラサイト・シングルってやつだよ」瀬川はむしろ自慢げに言った。
「うちもずっと家にいるわけじゃないけどさ、三人の子供がみんな社会人になって、それでいて実家に暮らしているってのは、なんていうかもう、家庭じゃないんだよね。家の中であっても外であっても、個人の時間が多すぎる。共有スペースの当番を押し付け合わなくちゃいけないぶん、一人暮らしより面倒なくらいだと思うよ」
と瀬川はそこまで一気に言ってしまい、空になったグラスの中の氷をストローでからからとかき混ぜる。

「瀬川ん家は、親も共働きだったもんな。そりゃそうなる」私はまだたっぷりあるカフェラテを含む。

「専業主婦ってやつがいないからな」瀬川が同意する。「でもこういうとき、やっぱり母さんとうちの負担が増えるんだよ。女って損だ」

「でも瀬川みたいな働き方は、女のほうが許容されやすい」私はわずかな棘を含ませて言う。

瀬川はただ首をすくめただけだった。ひと月分のお喋りは、どうやら終わったようだった。

投稿者プロフィール

ちひろ
ことば、文字、文章。
それはとても恐ろしいものでもあり、うんと心強い味方でもある。

文字はマンガに劣り、写真は動画に劣ると言われる時代で、文字の集積だけがもたらしてくれる「情報」以上の無限の想像のための余白。
そんな文字の持つ力に心躍る方がいたら、ぜひ友達になってください。
私はそんな友達を見つけるために、物書きをしているのです。

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