トリの悟り[言葉の切れ端055]

「心と体はつながってなんかいないのさ」
「心の中に体があるってこと?」
「いいや」トリは細い手で私の頭を撫ぜる。
「体があってこその心だってこと?」
「それも違う」
「もうわからない」私はこの会話に飽きはじめていたけれど、懸命に話し続けた。話すのをやめると、トリが遠くに行ってしまいそうで。
「心と体はこれ以上ないってくらい別々なんだ。このボールペンと、この爪楊枝みたいに。何の因果もなくここにあるだけで、互いに影響を及ぼすことはない。心身二元論。安心したかい?」
私はトリの目を見ないように、その腕へ顔を沈める。
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ことば、文字、文章。
それはとても恐ろしいものでもあり、うんと心強い味方でもある。
文字はマンガに劣り、写真は動画に劣ると言われる時代で、文字の集積だけがもたらしてくれる「情報」以上の無限の想像のための余白。
そんな文字の持つ力に心躍る方がいたら、ぜひ友達になってください。
私はそんな友達を見つけるために、物書きをしているのです。
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