常に家庭環境に問題がある[言葉の切れ端063]

君が人を殺したとするね。
キーフェ教授は諦めたようにぼくに向き直った。
あるいは、自殺をしたとする。どちらにも大きな差はない。
その原因を、幼少期の家庭環境に見出すことは容易だ。つまり、必ず家庭環境に狂いは見いだされるからだ。多かれ少なかれ。それが家庭というものだ。
それが限度を超えていたかどうかの本当のところは、世間には、外側の人間には判断できないんだよ。
だから、君が私のところへ来てくれたことは歓迎するが。
教授はクッキーをぼくのほうへ寄越した。
私には、君のやったことの原因を特定することはできない。わかるね?
クッキーの中央にあるいちごジャムは、ぼくに経血を思わせる。
書いた人
-
ことば、文字、文章。
それはとても恐ろしいものでもあり、うんと心強い味方でもある。
文字はマンガに劣り、写真は動画に劣ると言われる時代で、文字の集積だけがもたらしてくれる「情報」以上の無限の想像のための余白。
そんな文字の持つ力に心躍る方がいたら、ぜひ友達になってください。
私はそんな友達を見つけるために、物書きをしているのです。
新しい書きもの
日々のつぶやき2021.08.06当面の間、更新をお休みします。
言葉の切れ端2021.08.03涙の存在証明[言葉の切れ端254]
言葉の切れ端2021.07.31泣いてほしくないなんて願うには[言葉の切れ端253]
言葉の切れ端2021.07.28親しい友人の死を予測すること[言葉の切れ端252]
新刊発売中!
できることなら、十四歳という年齢はすっとばしてしまえるのがいい。
冬に元気をなくす母親と、影の薄い善良なフィンランド人の父親を持ち、ぼくは彼らの経営する瀬戸内市の小さなリゾートホテルで暮らしていた。ある時なんの前触れもなしに、ぼくにとって唯一の友達であったソウタが姿を消した。学校に行くことをやめ、代わり映えのしない平穏な日々を過ごすぼくの生活に、少しずつ影が落ちはじめる。
『レモンドロップの形をした長い前置き』
著者:田中千尋
販売形態:電子書籍、ペーパーバック(紙の書籍でお届け。POD=プリントオンデマンドを利用)
販売価格:電子書籍450円(※Kindle Unlimitedをご利用の方は無料で読めます)、ペーパーバック2,420円
冬に元気をなくす母親と、影の薄い善良なフィンランド人の父親を持ち、ぼくは彼らの経営する瀬戸内市の小さなリゾートホテルで暮らしていた。ある時なんの前触れもなしに、ぼくにとって唯一の友達であったソウタが姿を消した。学校に行くことをやめ、代わり映えのしない平穏な日々を過ごすぼくの生活に、少しずつ影が落ちはじめる。
『レモンドロップの形をした長い前置き』
著者:田中千尋
販売形態:電子書籍、ペーパーバック(紙の書籍でお届け。POD=プリントオンデマンドを利用)
販売価格:電子書籍450円(※Kindle Unlimitedをご利用の方は無料で読めます)、ペーパーバック2,420円