進化が毒を制する[言葉の切れ端082]

いまから約五〇〇年前、まだ動植物を自ら調理し栄養を摂取していた頃の人々にとって、このチューブ栄養は一回の服用で死に至るほどの猛毒だ。かつての食品添加物の毒性など、比べる対象にもならない。

しかし今の我々にとっては、唯一無二の完全栄養だ。人類はもう生態系を破壊しなくてもよくなった。実際のところ、彼らも壊したくて壊していたわけではなかったのだろう。

その時代の健康志向主義者たちの意見――我々人類は保存料や抗生剤に殺される云々――は、長い目で見れば正しくはなかった。

我々は毒に慣れ、耐性を獲得した。

たしかに個体レベルでの寿命は縮まったが、そのぶん進化のスピードは加速したのだ。

投稿者プロフィール

ちひろ
ことば、文字、文章。
それはとても恐ろしいものでもあり、うんと心強い味方でもある。

文字はマンガに劣り、写真は動画に劣ると言われる時代で、文字の集積だけがもたらしてくれる「情報」以上の無限の想像のための余白。
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