変わっていく友人[言葉の切れ端094]

「浮気とか不倫とかじゃないのよ、これは」

孝子の話に対して私が理解できないという態度を示すと、彼女はそう言った。

学生時代は、私も孝子もそういうのに対してうんと潔癖だったのに、孝子だけが変わってしまった。それでも唯一の親友を、私は切ることができない。

「ただ記号としてのセックスを消費したくなるだけ。夫とセックスすることもできるわよ、もちろん。でもね、そこには意味が生まれてしまうのよ。私の求めているのは、そういうのではないのよ」

「ねえ孝子、幸福?」私はそれだけ聞く。ウイスキーのおかげで頭がくらくらする。

「そうね」孝子は少しだけ考える。「そう言っていいと思う」

私はたぶん、孝子がうらやましいのだ。変わってゆく親友が。

私だけが、いつまでもここから動けないでいるのだ。

書いた人

ちひろ
ことば、文字、文章。
それはとても恐ろしいものでもあり、うんと心強い味方でもある。

文字はマンガに劣り、写真は動画に劣ると言われる時代で、文字の集積だけがもたらしてくれる「情報」以上の無限の想像のための余白。
そんな文字の持つ力に心躍る方がいたら、ぜひ友達になってください。
私はそんな友達を見つけるために、物書きをしているのです。

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できることなら、十四歳という年齢はすっとばしてしまえるのがいい。
冬に元気をなくす母親と、影の薄い善良なフィンランド人の父親を持ち、ぼくは彼らの経営する瀬戸内市の小さなリゾートホテルで暮らしていた。ある時なんの前触れもなしに、ぼくにとって唯一の友達であったソウタが姿を消した。学校に行くことをやめ、代わり映えのしない平穏な日々を過ごすぼくの生活に、少しずつ影が落ちはじめる。

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