バカは風邪をひかない、の本当の意味[言葉の切れ端115]

「バカは風邪をひかない、の本当の意味知ってるか?」

たまに二人きりでワインを開けるとき、ケントはこういう話を私にする。

「バカは、風邪をひいていることに気がつかない」ケントに花を持たせてやるほど、私は大人ではない。

「風邪をひいていることに気がつかない人間をバカ呼ばわりしている時点で神に見放されているということに、気づいているか?」ケントがほとんどひと息にそう言う。
どうやら私は彼が欲しがっていた答えを与えてしまったらしかった。

「神なる支配者は、我々に思考をさせたくないんだ。だから思考をしない人間に、見返りとして心身の健康を与える。それはつまり、人間はどのような状態であれ常に病んでいる存在であり、それに気がつかないようにしてやるぞ、ってことなんだよ」

「君は本当に風邪をひかないからね」赤ワインが脳血流に交じる。

ケントが誇らしげにうなずく。

彼との暮らしはわりに楽しい。

投稿者プロフィール

ちひろ
ことば、文字、文章。
それはとても恐ろしいものでもあり、うんと心強い味方でもある。

文字はマンガに劣り、写真は動画に劣ると言われる時代で、文字の集積だけがもたらしてくれる「情報」以上の無限の想像のための余白。
そんな文字の持つ力に心躍る方がいたら、ぜひ友達になってください。
私はそんな友達を見つけるために、物書きをしているのです。

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