ちっとも本当のことは含まれていない[言葉の切れ端132]

あのとき彼女が泣いていた理由を、僕はたぶん未だにうまく理解していないのだと思う。

芸術家でもあるまいし。

そう言って彼女はたぶん、ソーシャルいいねを多く獲得した人を画面の前でなじったのだ。その声は本人に届かない。

「一般人の表現力なんてたかが知れている。それなのにネットは人々に表現の場を与えてしまった。人は、それをあたかも自分自身であるように描写する。あまりにも稚拙な文章で。悪いことに、多少なりとも見栄も添えて。それが、違和感の正体なんだよ。そこにはちっとも本当のことは含まれていないんだよ。ノンフィクションは、真実性という意味では絶対にフィクションを超えられないんだよ。ねえ、このままじゃ本当に力を持った人が死んでしまうよ。そうなったらもう、この世界は終わりだよ」

投稿者プロフィール

ちひろ
ことば、文字、文章。
それはとても恐ろしいものでもあり、うんと心強い味方でもある。

文字はマンガに劣り、写真は動画に劣ると言われる時代で、文字の集積だけがもたらしてくれる「情報」以上の無限の想像のための余白。
そんな文字の持つ力に心躍る方がいたら、ぜひ友達になってください。
私はそんな友達を見つけるために、物書きをしているのです。

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冬に元気をなくす母親と、影の薄い善良なフィンランド人の父親を持ち、ぼくは彼らの経営する瀬戸内市の小さなリゾートホテルで暮らしていた。ある時なんの前触れもなしに、ぼくにとって唯一の友達であったソウタが姿を消した。学校に行くことをやめ、代わり映えのしない平穏な日々を過ごすぼくの生活に、少しずつ影が落ちはじめる。

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