長い死に支度[言葉の切れ端162]

我々は年を重ねるごとに色んなものを失ってゆく。
文字通り、色んなものさ。

体力、新陳代謝、若々しい肌、そして無限の可能性。
年を取ると自由や知恵が手に入るという人たちもいるが、そんなものが失われたものたちの対価になると思うか?

五十を過ぎると、状況はいっそう悪くなる。我々は喪失から目を背けることにすべてを費やさなくてはならなくなる。

なぜ人間がそのようなつくりをしているか。

考えてもみたまえ、そうでもしないと、死ぬのが惜しくてとても社会は保たないよ。
年寄りは自分でも気づかないうちに、ゆるやかに死を希求するようになる。

我々の人生の大半はつまり、長い死に支度なのさ。

投稿者プロフィール

ちひろ
ことば、文字、文章。
それはとても恐ろしいものでもあり、うんと心強い味方でもある。

文字はマンガに劣り、写真は動画に劣ると言われる時代で、文字の集積だけがもたらしてくれる「情報」以上の無限の想像のための余白。
そんな文字の持つ力に心躍る方がいたら、ぜひ友達になってください。
私はそんな友達を見つけるために、物書きをしているのです。

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できることなら、十四歳という年齢はすっとばしてしまえるのがいい。
冬に元気をなくす母親と、影の薄い善良なフィンランド人の父親を持ち、ぼくは彼らの経営する瀬戸内市の小さなリゾートホテルで暮らしていた。ある時なんの前触れもなしに、ぼくにとって唯一の友達であったソウタが姿を消した。学校に行くことをやめ、代わり映えのしない平穏な日々を過ごすぼくの生活に、少しずつ影が落ちはじめる。

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