折れた鉛筆の教訓[言葉の切れ端189]

子供が三人、取っ組み合いのけんかをしていた。生死にかかわるんじゃないかってくらい、激しくさ。
そこに男が通りかかってよくよく聞いてみると、彼らは一本の鉛筆を争っていたんだ。
男はその鉛筆をしげしげと眺めた。何の変哲もない、真新しい2Bの鉛筆だ。
突然、男はためらいなく鉛筆を折って、三つに分けてしまった。
馬鹿は喧嘩をする。
いい人は我慢をする。
賢い人は、みんなが幸せになれる智慧をだす。
子供たちが喜んで折れた鉛筆をそれぞれ持って帰ったなら、あるいはそんな教訓もつけられたかもしれない。
でも彼らはみんな揃って泣き出してしまった。男は折れた鉛筆を持って、同じように泣きながら帰った。
男が王になる、ずっとずっと前の話だよ。
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ことば、文字、文章。
それはとても恐ろしいものでもあり、うんと心強い味方でもある。
文字はマンガに劣り、写真は動画に劣ると言われる時代で、文字の集積だけがもたらしてくれる「情報」以上の無限の想像のための余白。
そんな文字の持つ力に心躍る方がいたら、ぜひ友達になってください。
私はそんな友達を見つけるために、物書きをしているのです。
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