有限な資源は無限に近づいている[言葉の切れ端203]

人生とか世界とか、そういうつかみどころのない有限な資源について話をすると、どうしても形容詞的にならざるをえないよね。

でも我々人類に限っていうなら、キャパシティーは増え続けている。
つまり無限に近づいているってことだ。

小さな汽車に入り切らなかった乗客たちが、みんな座席に座れるようになる。
ほとんど貸し切り状態の車両だって出てくるかもしれない。快適だよね、どう考えても。

でもどういうわけか、我々の同類たちはそれを快いと思わなかった。
汽車は常に乗車率200パーセントを達成しているほうが望ましいらしい。費用対効果の側面から? どうだろうな。

とにかく、今の世界の成り立ちはこんなふうなんだ。
キャパシティーを増やし、空いたところにまた何かを詰めこむ。

詰めこまれる中身は、優先順位の低いつまらないものしか残っていない。詰めこんだときの達成感はみるみる薄れていくが、しかしそうするよりほかにない。

事態を少しでも改善するには孤独を手懐けるより他にないが、残念ながらそれは社会的動物には向かない。

書いた人

ちひろ
ことば、文字、文章。
それはとても恐ろしいものでもあり、うんと心強い味方でもある。

文字はマンガに劣り、写真は動画に劣ると言われる時代で、文字の集積だけがもたらしてくれる「情報」以上の無限の想像のための余白。
そんな文字の持つ力に心躍る方がいたら、ぜひ友達になってください。
私はそんな友達を見つけるために、物書きをしているのです。

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できることなら、十四歳という年齢はすっとばしてしまえるのがいい。
冬に元気をなくす母親と、影の薄い善良なフィンランド人の父親を持ち、ぼくは彼らの経営する瀬戸内市の小さなリゾートホテルで暮らしていた。ある時なんの前触れもなしに、ぼくにとって唯一の友達であったソウタが姿を消した。学校に行くことをやめ、代わり映えのしない平穏な日々を過ごすぼくの生活に、少しずつ影が落ちはじめる。

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