マンドラッペガーじゃ通じない[言葉の切れ端208]

「トースコラーマレ」背の低いほうの男が言った。

「カイムラントメヌ」背の高い方の女が答える。
答えたのだと思う、彼らの中では意思疎通が図れているようだから。

「マンドラッペガー?」私は適当にでっちあげた言葉を二人に投げかける。

二人はぽかんとした顔で、それでも私だけが疎外されていることを気の毒に思ったのか、困ったように「フネガー」とうなずく。

人類全体で二人にしか話せない言葉。私はそれがひどくうらやましくなる。

仕事とはいえ、私が彼らの言葉を理解し、保存しようとしているのは、あるいは単純に妬みから来るものかもしれない。

書いた人

ちひろ
ことば、文字、文章。
それはとても恐ろしいものでもあり、うんと心強い味方でもある。

文字はマンガに劣り、写真は動画に劣ると言われる時代で、文字の集積だけがもたらしてくれる「情報」以上の無限の想像のための余白。
そんな文字の持つ力に心躍る方がいたら、ぜひ友達になってください。
私はそんな友達を見つけるために、物書きをしているのです。

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できることなら、十四歳という年齢はすっとばしてしまえるのがいい。
冬に元気をなくす母親と、影の薄い善良なフィンランド人の父親を持ち、ぼくは彼らの経営する瀬戸内市の小さなリゾートホテルで暮らしていた。ある時なんの前触れもなしに、ぼくにとって唯一の友達であったソウタが姿を消した。学校に行くことをやめ、代わり映えのしない平穏な日々を過ごすぼくの生活に、少しずつ影が落ちはじめる。

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