公務員と民間企業の違いをお金の流れ方から考えてみる

公務員

わたしは民間企業に二年半勤めていた。(学生期間のインターン含む)
まぁ民間企業と言っても、母親の営む小さな会社に所属していたというだけなので、大企業をイメージされるとちょっとズレがあるかも。

そして、公務員になった。
今日は、公務員になって半年を迎え、無事に条件付採用職員から正職員になったわたしの考える、「民間と公務員の違い」ってやつを考えてみたい。

給料や業務内容の比較なんかについては、ほかのサイトにも色々載っているので、ここではあえて書かない。

民間企業

言うまでもなく、民間企業は商品やサービスを売って、それをお客さんに気に入ってもらい、購入してもらうことにより収入を得る。
その利益で、次の商品の材料を買ったり、人を雇ったりする。

ここで大事なことは、企業は自分の得意分野で売りたい商品を作り、それに合ったお客さんに提供していく。
お客さんのほうも、自分の気に入る商品を購入する。
だから、企業は自分の商品を買うお客さんたちの満足度を100%にするために必死になるし、あるいは120%満足させてリピート買いしてもらったり、他の誰かに伝えたくなるように仕向けたりする。

そういう意味で、企業とお客さんは基本的に相思相愛なのだ。
一方は商品が売れて利益が出てお客さんにも喜んでもらえて、一方はお金を出して、それ以上の価値があると思える商品を手に入れる。
どっちもうれしい。

けれど、最近の大きな流れとして、企業は無理矢理に消費を生み出すようになってきた。
お客さんに「気に入ってもらう」のではなく、「気に入らせる」ためのテクニックを駆使するようになってきた。
「消費するということは豊かであること」という価値観はやや古いかもしれないが、それでもまだその風潮は残っているため、お客さんの方も必死で消費活動をし、熱心にSNSでアピールする。
それはあるいは、消費で塗り固めた「自分らしさ」「優越感」「匿名からの離脱」ということかもしれない。
ほとんど無限に続きそうなそれに、わたしはすっかりうんざりして、民間企業というフィールドに距離を置くことに決めた。

公務員

公務員として働いてみて、それまでとは全く違うことがらが見えてきた。
「お客さんの期待を100%叶えることは当たり前。期待を超えてこそ、感動がある」みたいな思考が完全に覆された。

もちろん、公務員の世界にドロドロとした汚いものがなかったわけではない。
むしろ、民間企業は「はい、商品」「はい、買います」という図式が成立しているだけに、随分シンプルだなとすら感じたほどだ。

行政という仕事の複雑さたるや……ドロドロなんて当たり前。ここはとある古い村であります、って感じ。

まず、行政の提供するサービスや商品は、基本的に独占状態である。
もちろん、人口減少の進む中で、転入者の取り合いをするという点では、自治体もある意味では企業なのかもしれないけれど、ここではその話は一旦置いておく。

行政と民間の最たる違い。
それは、行政は「先に支払いありきのサービス提供」というところなんじゃないか。
つまり、お客さんは行政を(基本的には)選べないし、その逆もまた然りなのだ。

行政は、そこに住む人々から税金というお代を強制的に前払いしてもらい、サービスを提供する。

お金とサービスのやり取りという点では一見違いはなさそうだけれど、そこに双方の「自由意志」が存在するか否かということは、極めて重要な要素ではないだろうか。

つまり。
あるとあらゆる世代の、ありとあらゆる収入帯の、ありとあらゆる価値観を持った人々を相手にしているのだ。

現実的に考えて、これらの人々を同時に100%、いや120%満足させることなどできるのだろうか?
できる、というのが理想だろう。
そこを目指すことも大切だろう。

けれど、行政という仕事ほど、「あっちを立てればこっちが立たず」という仕事はないんじゃないだろうか。
下の記事でも書いたけれど、
【小説】俺たちは公務員なんだからさ、「公平」じゃなくて「平等」なんだよ。
世界には、本当にいろんな人がいる。

どう頑張ったってみんなを満足させることはできないし、行政は自分たちが提供するサービスに満足して、喜んでお金を出してくれるお客さんばかりを相手にしているわけにはいかない。

70点。
ここで腑に落ちた。
公務員という仕事は、誰かの120%の満足を引き出すだけでも、誰かを30%しか満足させられなくても駄目なんだ。
みんなから「平等に」70点をもらうような仕事をしなくちゃ。

だから、公務員への不満はなくならないのかもしれない。
100の税金を払っていて、70のサービスしか返ってこないのだから。

わたしもそう思っていた。
顧客獲得のために必死こかなくていいんだから、せめていいサービス提供してよ、と。
けれど、必死で市民のために頑張っている職員(全員ではないにしても)を見ると、なんだかやりきれなくなる。

みんなの70点を取るのも、結構難しいんだな、と。
これが「全体の奉仕者」ってことの真意なんじゃなかろうか。

投稿者プロフィール

ちひろ
ことば、文字、文章。
それはとても恐ろしいものでもあり、うんと心強い味方でもある。

文字はマンガに劣り、写真は動画に劣ると言われる時代で、文字の集積だけがもたらしてくれる「情報」以上の無限の想像のための余白。
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4 thoughts on “公務員と民間企業の違いをお金の流れ方から考えてみる

  1. なおき より:

     大変よくわかりました。私は福井県で農業をしている民間人です。
     最近、民間人と行政人(公務員)のちがいで悩んでいました。
     近所に数年前に町(役場)の出資で農業法人ができました。内容は都会から若者をよんで農業研修して農家になってもらう的な。
     私はそこと関わりがある人間ですが、そこのやり方が気に入りませんでしたかなり。
     出資金は半分ですが町から出資してできた会社だから、そこの従業員などは半分公務員なのです。だからしょうもない町の頼みごととかきいたり。民間では考えられない。
     でも今回読んでよくわかりました。彼らは半分公務員さんだから、利益が出なくてもあまり気にしない。
    純民間人(資本が自己資本)の人間とは考え方は絶対合わないと。
     公務員の方が悪いわけでなく、一生懸命やってはると思います。でも根本的に違うのです。それが分かりました。ありがとうございます。

    1. mihirohizuki より:

      なおきさん
      コメントありがとうございます。
      まさか自分の感じたことが、こんなふうに読んでいただけるとは思わず、驚いています。
      わたしは、役所体質が合わずに公務員を辞めてしまいました。
      公務員を目指したのは、ビジネスの世界の「金、金、金」主義に嫌気がさしたから。
      でも、公務員をしてみて、利益を求めるということは、すなわち「頭を使って考えて、優先順位を決めてものごとを進めること」なんだなと知りました。
      行政の仕事は、基本的には優先順位なんて決めません。決めてはいけないんです。特に人の優先順位は。「ターゲット」なんて存在しません。平等でなくてはならないから。
      民間とは、もともと違う方向を向いている人たちなのです。だから、それぞれが頑張ったとしても、なかなか同じ目標には向かっていけない。
      難しいものです。
      でも、今回コメントをいただいたことで、改めて考えることができました。
      ありがとうございます。

      祖父が農家で、作物を育てることの尊さや難しさ、自然の恵みや厳しさはよく教えられてきました。
      効率化された工場で作る製品が人の口に入るようになった時代でも、食べ物を大切にしない人は、痛い目を見ると思っています。スーパーで当たり前に何でも買えるなんて思っちゃいけない。微力ながら応援しています。

  2. 磯辺 建臣 より:

    公務員を擬似体験出来て面白かった。

    1. mihirohizuki より:

      磯辺さん
      ありがとうございます。
      経験をもとに、法に触れない程度に行政のことも書きたいと思っています。

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