稲穂が育つことと、遅咲きのひまわりと、成長のお話

ひまわり

残暑お見舞い申し上げます。
まだまだ日本は暑く、残暑という呼び方では物足りない気さえします。

あくまで個人的な好みですが、夏の終わりというのはほんのりと寂しさを覚えます。
秋の訪れを知らせる風が吹いて、夏の思い出をみんなどこかへさらって行ってしまうような。
だから、夏が日本列島にしがみついているということを、心のどこかで喜んでいたりもします。

台風が来なかったり、おかしなところへ来たり、いつにも増して暑かったり、そんなふうに環境がねじ曲がっていても、植物は育ちます。
あるいは、この異常な天気たちを新しい環境として受け入れて、適応しているのでしょうか。

人間だけが、自分勝手に環境を荒らし、そのとばっちりを受け、慌てふためいているだけなのかもしれない。

そんなふうにあれこれ妄想するわたしをよそに、今年も稲穂が育ってきました。

稲穂

田植えの時期はあんなにもか弱い、数本の草に過ぎなかったのに。
もうひと月もすれば、穂の部分が黄金色に変わり、稲刈りの時期を迎えます。

そして、少し遅れて咲いたひまわり。

ひまわり

毎日水をやっていると、日に日に背丈が大きくなり、ついに花を咲かせます。
ひまわりは、「太陽の花」というその英語名とはうらはらに、弱い植物だと言われています。

でも、ちゃんと咲いた。
遅れてでも、きれいな黄色い花びらが開きました。
ミツバチが花に止まっている様子を見ると、こうしてミツバチもひまわりも巡っていくんだなあ、と教えられるようです。

自分が成長していないんじゃないか、と不安になる時。
何のために生きているんだろう、と無気力になる時。
結局どこに行き着こうとしているのだろう、と進めなくなる時。

植物は、いつもいつでも教えてくれる。
優しく、儚く、そして強く。

季節を知り、進みすぎるでもなく、止まったままでもなく、ただ巡って。
淡々と生き、そして次の世代にバトンを渡して。

わたしたちがあたふたしている時でも、彼らのスピードで巡っていく。
少し遅れることがあっても、実らない年があっても、

ちゃんと続いてゆく。

すくすくと育つ稲穂は強く、
遅咲きのひまわりは特別美しく、

そして、本当の成長っていうのは、そういうことなのではないかと。

投稿者プロフィール

ちひろ
ことば、文字、文章。
それはとても恐ろしいものでもあり、うんと心強い味方でもある。

文字はマンガに劣り、写真は動画に劣ると言われる時代で、文字の集積だけがもたらしてくれる「情報」以上の無限の想像のための余白。
そんな文字の持つ力に心躍る方がいたら、ぜひ友達になってください。
私はそんな友達を見つけるために、物書きをしているのです。

新刊発売中!

できることなら、十四歳という年齢はすっとばしてしまえるのがいい。
冬に元気をなくす母親と、影の薄い善良なフィンランド人の父親を持ち、ぼくは彼らの経営する瀬戸内市の小さなリゾートホテルで暮らしていた。ある時なんの前触れもなしに、ぼくにとって唯一の友達であったソウタが姿を消した。学校に行くことをやめ、代わり映えのしない平穏な日々を過ごすぼくの生活に、少しずつ影が落ちはじめる。

『レモンドロップの形をした長い前置き』
著者:田中千尋
販売形態:電子書籍のみ
販売価格:450円(※Kindle Unlimitedをご利用の方は無料で読めます)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。