「有言実行」の有用性について
「有言実行」という言葉がある。
もともとは「不言実行」という言葉をもじってできた言葉だそうで。
意味は、発言したことを責任をもって実践すること。
この「有言実行」という言葉が結構クセモノだと思うのです。
つまり、何かを宣言するかしないか、その後何かを成し遂げるかどうかについて、以下の4通りが考えられる。
《有言の場合》
①有言実行
②有言不実行
《不言の場合》
③不言実行
④不言不実行
①有言実行
・現在の自分
偉大なる宣言を周知しておくことで、自らの意識の高さを知らしめ、さらに成果への過程で自分自身を鼓舞するためにあえて人前で自分を追い込むような状況を作ることによりモチベーションのアップが可能。
周りにとっても、黙ってわけのわからないことをやられるよりは良い場合もあるし、時には周りの人が助けの手を差し伸べてくれるかもしれない。
・未来の自分
自ら打ち立てた目標を達成することにより、達成感が生まれる。
同時に、周囲に対しても同様の過程を見せることができ、コミュニティにおける自身の評価向上が可能。
②有言不実行
・現在の自分
有言実行の場合と同様
・未来の自分
最悪の事態。
自身の不達成感どころか、周囲からの冷たい目線が刺さる。
成し遂げうる自信ややる気はないが、友人たちに向かってそれらしいことを言うことで、何とか面子を保っていられる哀しい人たちや、挫折しやすい人たちに下される鉄槌。
時に巻き込んだ人たちに迷惑をかけることも。
③不言実行
・現在の自分
わざわざ周知せずとも、自身が自身の目標を知っていれば、達せぬうちは公言しないというイケメン。
周囲からのプレッシャーに自分を追い込まなくとも、目標達成のために努力できると自負する場合に採られる方法。
例え失敗しても誰にも責められることはない、と自身に逃げ道を作ることができる。
ちょっとずるい手法。
秘密裏に目標達成を行いたい場合にも有効。
・未来の自分
自分の意志のみで実行したというこの上ない達成感と自己肯定感を手に入れられる。
また、周囲を驚かせることもでき、人知れず努力していたことも知られるところとなる。
④不言不実行
・現在の自分
不言実行と同様
・未来の自分
決意をしたこともそれに向けて努力したことも、対外的には無に帰す。
「やはり自分にはできない」と自己否定感は生まれるが、特に周りの評価が下がるわけではない。
単純に、勝手にヘコむだけとなる。
さて、この4パターンを見て、皆さんなら有言と不言、どちらを選ぶだろうか?
もちろん未来の自分が確実に実行できれば言うことはないのだが、それほど意志の強い人間ばかりでもない。
私なら、不言を選ぶ。
自分が立てた目標を自分が達成するのに、あまりとやかく言われたくない質(たち)だからだ。
また、あまりにも「口だけ人間」を見てきてしまったせいもある。
特にエリート志向の人に多かったのだが、とにかく口は上手い。
大きな夢を語ったり、大変そうな仕事を引き受けたり、組織を立ち上げてみたり。
その時はキラキラ輝いているし、本人もしたり顔なのだが、殆どと言っていいほど最後まで続いた試しがない。
地味な作業はすぐに飽きて、目標は置き去りにされる。
なんと格好の悪いことか。
目も当てられない。
しかも、そういう人に限って次々と新しい「野望」や「夢」を見つけてくるものだから、笑いをこらえるのが大変だ。
口だけの人。
その割合の多さに、私は「有言」タイプの人をだんだんと信じられなくなってきている。
「ホンモノ」は、ぺらぺらと口を動かす前に、黙々と目標に向かって歩を進めているのだ。
有言が悪いとは言わない。
ただ、うすっぺらい言葉だけを並べ立てる大人にはなるまいと、心に誓う。
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ことば、文字、文章。
それはとても恐ろしいものでもあり、うんと心強い味方でもある。
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