現状維持の難しさ

「目標に向かってコツコツと努力し、突き進むことができる人」

こういう人は世間からかなりの賞賛を浴びる。

自分の大きな夢を小さな期間に細分化し、目標を着実に積み上げていくこと。
それは確かに大きなエネルギーを要するし、尊敬に値すべきことだ。

けれど、あえて私はこう言いたい。

一番難しいのは、「現状を維持する」ことなんじゃないかと。

つまり、何か大きな夢があってそれに向かって突き進めばいいのであれば、ある種の人間にとってこれほど楽なことはないのだ。
なぜなら、そこには「頑張る方向性」が明確にあり、ただそこに向かってがむしゃらに突き進めばいいのだから。

口で言うほど簡単ではないだろうが、そこにはゴールがあり、ゴールを目指すための気概も、自分の体もある。

厄介なのは、「現状維持だ」。

人生はマラソンのようなもので……という言葉を耳にしたことがある。

たしかにそれは一つの真理を表しているだろうし、マラソンをしたことのない私にとやかく言う資格はない。

ただ、マラソンはゴールがある。走る距離と、その方向が決まっている。

それに比べて、「目立ち過ぎないように爪を隠す」「健康体を維持する」「適度に近所付き合いをしておく」ということの難しいことといったらない。

どれも、「やりすぎてはいけないが、やらなさ過ぎると退化する」のだ。

しかも、程度だけではなく「方向」が決まっていないものも多いから、本当に加減を見極めることに疲れてしまう。

「なにごともほどほど」って、本当に難しい。

投稿者プロフィール

ちひろ
ことば、文字、文章。
それはとても恐ろしいものでもあり、うんと心強い味方でもある。

文字はマンガに劣り、写真は動画に劣ると言われる時代で、文字の集積だけがもたらしてくれる「情報」以上の無限の想像のための余白。
そんな文字の持つ力に心躍る方がいたら、ぜひ友達になってください。
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