量産型娯楽の進化
昨日から、家族といとこ一家で「箕面温泉スパーガーデン」に来ている。
関西人なら、今のところをメロディなしには読めまい。
実を言うと、祖父も含めた総勢10人で旅行をするのは初めての経験である。
体力のない祖父を気遣い、大阪府内の近場での旅行にしたのだ。
今はというと、ゆりかごの中で読書をしている合間にブログを書いている。
あらかた舐めてかかっていたのだが、今回の旅行は思いのほか楽しかった。
すでに、来月の母方の祖父らとの旅行の予約も、昨日ここに決めてしまったほどだ。
久しぶりに感激する旅行だったので(ある意味では、ということだ)、書き留めておくことにする。
まず、昼食の後に家を出て、半時間ほどで箕面温泉スパーガーデンに到着した。
ここは大江戸温泉物語のチェーンのひとつで、古いホテルを改装した感が否めない。
バブルの名残りっぽい匂いが、ぷんぷんする。
祝日のせいもあってか、駐車場は混雑していた。
2時頃にチェックイン手続きを済ませ、大江戸温泉物語内に入る。
ここは、スパワールドとホテルが合体したようなイメージで、大江戸温泉物語の方は日帰りの客も多い。
まずは「箕面座」という、舞台型の席を陣取り、楽しみにしていたお笑いを見る。
かつて私のモノマネ十八番であった、「藤崎マーケット」。
生で見ると、さすがのテンポの良さに終始腹を抱えて笑った。
もう一人の「グイグイ」としか言わない芸人は、もう少し練習が必要なように思われた。
部屋に荷物を移動させ、4時過ぎから立て続けに大衆演劇を見る。
時代劇コメディのようなそれは、なかなかどうして本格的で、無料観覧できるものとは思えないほどのクオリティだった。
夕食は5時からで、なんと150種類以上のバイキング形式(食べすぎるという選択肢しかない)で、すっかり満足した。料理だって、わりあい美味しいのだ。
それからほんの少し休憩を挟んだ後、2名の脱落者を除いた8人でボーリングを3ゲームする。
こちらも、貸靴代を合わせても1人千円もかからず、リーズナブルな値段設定に驚き、昔ながらの雰囲気を残すボーリング場に首肯するのだった。(ちなみに最高スコアは103。まずまずだ)
間髪を入れず、岩盤浴。
こちらは、小さな石を敷き詰めたものから、岩塩岩盤浴、檜のベッドをあしらった岩盤浴など、部屋ごとに分かれた岩盤浴が楽しめ、随分と長居してしまった。
風呂でゆっくりと汗を流して部屋に戻ったのが午前1時。
普段、旅行と言えばひたすら「何もしない」ことを好む私にはいささか忙しい1日だったが、これだけ充実した施設とも言えるのだ。
実を言うと、まだまだ足りないくらいだった。
宴会は2時まで続いた。
翌朝。
睡眠不足にも関わらず、すっきりと目覚められた。
まだ食べ物が残っている胃に(先日、消化不良と内科の診断を受けたばかりである)、さらにご馳走を詰め込む。
なんてバブリーなのだろう。
10時のチェックアウト後も、大江戸温泉物語のほうは無料で入ることができる。
お遊びのようなささやかな縁日を楽しみ、ヒーローズという、アイドルの養成グループ(でもオッさんばかりだった気もする)のショーを見て、風呂に入る。
箕面の天然温泉は、湯がトロトロしている。
乾燥して砂漠のような私の肌にはありがたい。
そうして、二度目の大衆演劇が始まった。
私は少し抜け出し、繭の中にいるかのような、ふんわりと包み込んでくれるゆりかごの中に収まっている。
ずっとこうしていたい、とスポイルされた頭でぼんやりと思考する。
このまま溶けてなくなってしまいそうだなぁ。
建物の所々に年季は感じられるが、古くて不潔というわけでは決してない。
客の喜ぶポイントは外さない。
親切な中居さんや、部屋食のサービスはないが、
豪華なバイキングと広い風呂、岩盤浴に芝居、マンガコーナーに縁日、カラオケやボーリングまである。
家族みんなが、それぞれの好きなことを好きなように楽しめる。
庶民向けの価格で。
こりゃ流行るわけだよなぁ、と頷く。
古いホテルも、生まれ変わったように活気付く。
ビジネスの上手い人というのは、やっぱり上手い。それに乗じて、ぬくぬくと平日の堕落を楽しむ私は、やはりこうして静かに一人本を読むのが幸せなのだ。
からだをぽかぽかさせながら。
ゆうらりゆらゆら揺りかごにこもって。
ふはぁーーー
と、あまいアイスティーを含みながら。
書いた人
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ことば、文字、文章。
それはとても恐ろしいものでもあり、うんと心強い味方でもある。
文字はマンガに劣り、写真は動画に劣ると言われる時代で、文字の集積だけがもたらしてくれる「情報」以上の無限の想像のための余白。
そんな文字の持つ力に心躍る方がいたら、ぜひ友達になってください。
私はそんな友達を見つけるために、物書きをしているのです。
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