今はこういう時期なんだって思うことの有用性

前の会社を辞めてから、今の職に就くまで、約2ヶ月間のインターバルがあった。
ほとんど完全に自由な、一人の人間の春休み。

わたしはきっと、この2ヶ月間を忘れない。忘れてはならない。

本当につらい時期。
なにもかもが嫌になって、死にたいと思った時期。

そんな時期には、ちゃんと終わりが来た。

その時は、例え終わりが来るとしても、とてもじゃないけど今を耐えられなくて、本当にどうしたら人生から逃げられるのかばかり考えていた。
それでも死ぬのはやっぱり怖くて、死ぬ勇気もない自分がもっと嫌になった。

けれど、終わってみると、あれは一体何だったんだろうというくらい、あっけなく過ぎた。
今のわたしは、やや冷めていて、わがままで、けれど自分の好きなものはしっかり守る。

全部を守ることはできないから、選ぶことを覚えた。
大人たち、自分が大人たちだと思っていた人たちの世界が、少しずつ見えてきた。
それはあるいは思い込みかもしれないけれど、「ああ、そういうことだったのか」ということが増えてきた。

そういう目で世界を見ると、怖いオジサンは怖くなくなる。
怒鳴っているオバサンには、逆にアメ玉でもあげたくなる。

人間はいつまでも子供なんだと思うと、自分の抱え込むものも少しずつ軽くなった。

そうして迎えた二ヶ月の春休み。
家事をこなしながらとはいえ、無収入で二ヶ月も好きなことをさせてもらえる家庭に生まれて、本当に幸せ者だと思う。
本当に。

好きなだけ本を読んだ。
好きなだけ書いた。
そして、やっぱり余暇には飽きが来るということも改めて実感した。

やらされてそうするのと、自分の自由で選んですることは違う。

これから何十年間仕事をしていても、選ぶ自由だけは忘れないでありたい。

精神的に不安定なわたしだから、多少つらいことはあるだろうけれど、こういう時期があったことをお守りにしよう。

死にたい時期と、完全に自由な余暇。

そうして、なにもかもが長くは続かないことを思い出そう。

きっと、それは未来のわたしを救ってくれるはず。

投稿者プロフィール

ちひろ
ことば、文字、文章。
それはとても恐ろしいものでもあり、うんと心強い味方でもある。

文字はマンガに劣り、写真は動画に劣ると言われる時代で、文字の集積だけがもたらしてくれる「情報」以上の無限の想像のための余白。
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