模範的な休日の過ごし方。
風邪っぴきの時、いやに元気なことがある。
とは言っても、鼻水は止まらない。
咳も出る。
熱だってある。
そんな時は、家で過ごすのが一番である。
外は快晴。明日からは仕事。
そんな馬鹿な、と悪態をつきたくなる。
そんな時でも、家にいなければならない。
だったら。
家時間を思い切り楽しんでみれば?
まずは、話題のココナッツオイルでりんごを炒めてみよう。
腹を壊していたって、オイルでそれが悪化したって、オシャレさには敵わない。
こんな朝食、ちょっとやそっとじゃお目にかかれない。
両親が庭仕事をしてくれている間に、マスクをしてちょっと家を抜けだしてみるといい。
そこには、思いがけない素敵なパン屋との出会いと、香り高いコーヒー豆が君を出迎えてくれる。
家に帰ってコーヒー豆を挽いたら、温かい外に出てランチタイムとしようじゃないか。
ぽかぽか陽気。
淹れたてのアイスコーヒー。
材料にこだわった贅沢なパン。
庭仕事をした両親を労って、至福のひととき。
もしかしたら君は、薄暗いキッチンでうどんをすすっていたかもしれないのだ。
引っ越した時に植えた庭の木には、さくらんぼがなっている。
甘い甘いさくらんぼ。
今日は、普段仕事ばかりの母親が久しぶりに「お母さん」をしている。
君はうれしくなる。
ほら、母の手製のプリンを二つもたいらげた。
そうして君は、真夜中に腹痛にのたうちまわるかもしれない。
次の日に、会社で百回も鼻をかむはめになるかもしれない。
でもいいじゃないか、こんな幸せがあるんだもの。
書いた人
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ことば、文字、文章。
それはとても恐ろしいものでもあり、うんと心強い味方でもある。
文字はマンガに劣り、写真は動画に劣ると言われる時代で、文字の集積だけがもたらしてくれる「情報」以上の無限の想像のための余白。
そんな文字の持つ力に心躍る方がいたら、ぜひ友達になってください。
私はそんな友達を見つけるために、物書きをしているのです。
新しい書きもの
小さなお話2021.04.20給湯室のキメラ[小さなお話69]
言葉の切れ端2021.04.17よしよしよしよし[言葉の切れ端220]
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言葉の切れ端2021.04.11民のために水をせきとめた手は[言葉の切れ端218]
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できることなら、十四歳という年齢はすっとばしてしまえるのがいい。
冬に元気をなくす母親と、影の薄い善良なフィンランド人の父親を持ち、ぼくは彼らの経営する瀬戸内市の小さなリゾートホテルで暮らしていた。ある時なんの前触れもなしに、ぼくにとって唯一の友達であったソウタが姿を消した。学校に行くことをやめ、代わり映えのしない平穏な日々を過ごすぼくの生活に、少しずつ影が落ちはじめる。
『レモンドロップの形をした長い前置き』
著者:田中千尋
販売形態:電子書籍、ペーパーバック(紙の書籍でお届け。POD=プリントオンデマンドを利用)
販売価格:電子書籍450円(※Kindle Unlimitedをご利用の方は無料で読めます)、ペーパーバック2,420円
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