『内向型人間の時代 社会を変える静かな人の力/スーザン・ケイン』

3月に図書館で予約していた本が、やっと借りられる状態になったと連絡があった。
人気の本で、はるばる和泉市から取り寄せてくれたらしい。

無料にもかかわらず、図書館のサービス精神には頭が下がる。

そもそもこの本に興味を持ったのは、スーザン・ケインのTEDの動画を見たからだった。

この動画は、今でも私が最も好きな動画であり、最も共感できるそれだ。

ここで言われているのは、「外向型」と呼ばれる人々の性質が社会でいかに崇拝されているか、そして「内向型」と呼ばれる人々がいかに「外向型」となるべく教育されているかということであるように思う。
それに対して「内向型」の方が成績がよいという研究がされていたり、より深くものを考えることができるということを説き、内向型の感じる罪悪感を取り除き、その人権のようなものを取り戻そうとしてくれている気がする。

彼女自身がそもそも内向型人間であり、わたしもそうである。
さらに言えば、人間のうちの半分から3分の1は内向型なのだ。

しかし、多くの内向型は外向型であることが社会で「うまく」やっていくためのコツみたいなものだと教育されてきたし、実際に社会生活を送る上では(少なくともビジネスを行う上では)、外向型が注目を浴びる傾向にある。
著者の住むアメリカでは、特にその傾向が顕著なようだ。

「内向型」「外向型」とは?

「内向型」という言葉は、しばしば「内気」「引きこもり」ということと混同される。
スーザンのスピーチを聞いて私が思うのは、それは必ずしも一致しないということだ。
内向型の人は、時にはスピーチをする。パーティーを楽しむこともある。友人と会う時は、ひょうきん者としての役割を果たすかもしれない。
ただ、内向型と外向型ではエネルギーの溜め方が違うのだ。
外向型は、休みの日に買い物をしたり、友人とアウトドアでバーベキューを楽しんだりすることで、また新しい週への活力を得る。
内向型は、家で本を読んだり、家の周りを静かに散歩したりすることで充電を行う。

そして、彼女は「純粋な意味での『内向型』『外向型』というのは存在しない。誰もが両方の傾向を持っている」と言う。

これらの議論をより深め、より具体的な研究事例を示して話を展開しているのが、本書ということになる。

ここで、いくつか気になったフレーズを引用したい。

スイートスポットを見つける

自分にとっての覚醒の活性が高すぎも低すぎもしない、退屈も不安も感じない状況に、自分自身を置くようにすること。
心理学者が言うところの「最適な覚醒レベル」ーー私はこれをスイートスポットと呼んでいるーーを知っていれば、今よりもっとエネルギッシュで生き生きとした人生が送れる。(P158)

わたしの例で言えば、平日は思い切り働いて、休日のうち少なくとも一日はゆっくりと自室で本を読む。
すると、ある種のトランス状態に入り、するするとページが進む。
これがスイートスポットと呼ばれるものだろう。
逆に、来る日も来る日も本ばかり読んでいた時(以前二週間ほどこれを試したことがある)は、逆に集中できずにイライラ感が募った。
あまりに自分との対話や沈黙の世界に身を置き過ぎると、自分の中の雑音が大きくなってくるのかもしれない。

彼女はたったひとりで何時間も、ラジオをつけずにドライブできた。
非常に鮮明でまるで現実のような夢を、ときには悪夢を見た。
「奇妙なほど集中」することがあり、肯定的にせよ否定的にせよ感情が大きく揺れ動くことに悩んだ。
日常生活の中に尊敬できるものを見出せず、そうしたものは空想の世界にだけあるように感じていた。(P172)

これはある心理学者が自分自身を表現する時に用いた文章だ。
今のわたしには、驚くほど共感できるポイントがたくさんある。
彼女自身は幼い頃からこのような特性を感じていたそうだが、わたしは大学生の途中頃まで典型的な「外向型」だと思っていた。
ただ、「元気で明るい自分でいること」に時にぐったり疲れてしまい、友人関係が面倒になり、嫌われることを極端に恐れるあまり八方美人だった。
今思えば、わたしは毎日疲れていたのかもしれない。
わたしに必要だったのは、「ひとりきりで過ごす静かな休日」だったのかもしれない。

どこまで「外向型」を演じるべき?

私たちがどんな人間で、どんな行動をとるかには、生理学的な制限がある。
だが、可能な範囲内で自分のふるまいを操作するように試みるべきなのか、それともありのままの自分自身でいるべきなのか?
いったいどの時点で、自分のふるまいをコントロールできなくなったり、あるいは消耗しきってしまったりするのだろうか?(P261)

これは、内向型人間の永遠の課題かもしれない。
外向型であることがしばしば効果的であるなら、わたしたちは自分自身を出来るだけ叱咤激励して、外交的に振る舞うべきなのだろうか?
この問いに対してブライアン・リトルという教授がかなりはっきりした答えを示してくれたと筆者は述べる。

もしあなたが自由特性を実践しようとすれば、家族や友人や同僚の助けが必要だ。リトルはそれを「自由特性協定」を結ぶことと呼んでいる。
自由特性協定とは、私たちはみな、自分の性格にそむいて演技することがあるが、そのかわりに、残りの時間は自分自身でいられるということだ。
具体的な例をあげれば、毎週土曜日の夜に外出して楽しみたい妻と、暖炉のそばでゆっくりしたい夫がスケジュールを相談することだ。
たとえば二回に一回は外出、半分は家にいようという具合に。(P278)

だが、自由特性協定を結ぶべき、もっとも大切な相手は、じつは自分自身だ。
あなたが独身だとしよう。バーへ出かけるのは好きではない。だが、長い夜を一緒に楽しく過ごすパートナーや少人数の友人は欲しい。
その目的を達成するために、あなたは自分自身と協定を結んで、社交イベントへ出かけることにする。
なぜなら、それがパートナーに出会う唯一の方法だし、長い目でみれば集まりへ出かける回数を減らすことができるからだ。
けれど、イベントのために外出する回数は、負担を感じない範囲内に抑えなければならない。前もって、一週間に一度とか、一ヶ月に一度とか、三ヶ月に一度とか決めておくのだ。
そして、その回数をこなしたら、残りの時間は心おきなく家にいられる。(P279)

この答えに、なるほど! と膝を叩かないわけにはいかなかった。
それでよかったんだ、と。
わたしは、休みの日は外に出たくないものの、なるべく月に一度か二度は友人の誘いに乗ることにしている。
せっかく誘ってくれるものを、無下に何度も断るのも気が引けるというのもあるが、それが自分にとって「ちょうどいい」からだ。

予定を詰め込み過ぎないことで、きちんと充電期間は確保する。
そうすることで、友人との予定もより楽しめるし、実際にそれは家でこもってばかりいるよりも「いい」と思うのだ。
そこには、ただ家にこもって本を読むことへの罪悪感(外向型推奨の教育の賜物であろう)も含まれているかもしれない。

「内向型」と「外向型」の交わり

そして、スーザンは内向型と外向型の人間は、決して交じり合わない異世界の住人などではなく、むしろうまい具合に互いを補完できるパートナーとなりうると言う。
そのためには、いくつかのコツがあるようだ。

愛するパートナーが社交の楽しみを必要としていることを尊重し、あなた自身がひとりの時間を求めていることも尊重しよう。(あなたが外向型ならば、これは逆になる)
自由な時間は、自分がなにをしたいかにもとづいて過ごそう。(P339)

互いを尊重すること。
これを心がければ、「外向型」が息をして歩いているようなわたしの母親とも、もう少し折が合うようになるのだろうか、と少し思った。

とはいえ、まだまだ世界では外向型が権威を振るっている。
外向型の人々、あるいは外向型であるべきだと信じて生きてきた人々にそれをわかってもらうことも難しいだろう。

けれど、それを自分がわかっていることで、自分のスイートスポットを確保していくことができる。
大切な人に伝えることで、頑張りすぎないでいられる。
時に外向型として振る舞うことは、確かに効果的なのだから。

自分の核をしっかり守っていよう。
この本は、全ての内向型人間にとって、お守りのような存在になることだろうと思う。
きっと、内向型の人々は、大きな声で内向型の人権を叫ぶようなことはしないだろうから。

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