無駄をなくすこと。効率を求めること。世界が終わること。

「無駄をなくしましょう」
「効率を良くしましょう」

よく言われることだ。

その目的はなんだろう?

例えば、仕事の場合。
物質的な話で言えば、紙を使う量を減らすだとか、節電だとか、そういうことになるだろう。
もっとソフトな面での話で言えば、同じことを二度聞かないように心掛けるだとか、中身の無い会議を何度も開かないようにするだとか(これは当人たちが気づいていないのでどうしようもない面もある)、単純作業をIT技術を駆使して早くできるようにするだとか。

どれも納得の行く話だ、とわたしは思う。

では、日常の消費生活の場合。
Amazonの登場により、店に行く「無駄」が省けた。
メールやLINE、SNSの発達により、より「効率良く」人々とコミュニケーションが図れるようになった。
ソイレント(まだ完全ではないらしいが)のような完全栄養食の登場によって、食事をする「手間」が省けるかもしれない。

飽和する消費市場をなんとか経済的に循環させるために、企業が「無駄」に商品やサービスを出し続けているのではないか、という議論はここでは一旦置いておくことにする。

これまでのところ、日本ひいては世界は、無駄をなくし、効率を高めることで「快」を目指してきたように思う。

それは、決して間違った方向というわけではなかっただろうし、様々な価値観を持った人々が、それでも全体の利益を高めるためになんとか折り合いをつけて努力を重ねてきたのだろう。

けれど。
けれど、だ。

「無駄」「効率」
これらの言葉が一人歩きを始めると、随分と恐ろしい結末が待っている予感がする。
大げさかもしれないけれど、世界が終わってしまうような。

日本の教育の行く末
以前も書いたけれど、こういうこと。
わたしには、「無駄」「効率」を全て排除した先にある人間のあり方に、心を見出すことができない。
感情。
人間らしさ。
そういうものは、皮肉にも、そういういずれ排除されてしまう恐れのあるようなところにこそある気がしてならない。

実は、かく言うわたしは、無駄嫌いだ。
部屋には極力物を置きたくないし、机が散らかっていると、頭まで散らかっているように感じる。
効率の悪い仕事は、見ているだけでイライラする。
自分で自分の感情を無視しがちになる。
それでいて、いつの間にか気づかぬうちに自分の感情の波に飲まれている。溺れている。
ひどい自己矛盾だ。

ああ、いくら無駄を排除しようとしても、効率を求めても、人間は人間である以上は、ロボットにはなれないのかもしれない、と思う。
あるいは、真綿で首を締めるように、茹でガエル理論のように、それは行われるのかもしれない。

そして、これがまたやっかいなのだが、
「無駄」という定義は、人による。

何もかもをペーパーレスにしたがる人もいれば、わたしのように本は紙で読みたい人もいる。
飲み会での雑談を無駄な時間だと捉える人もいれば、それこそが人間関係構築の鍵なのだと信じてやまない人もいる。

だからこそ、争いはなくならないのだろう。

ただ、一般論としての「無駄の排除」「効率の追求」は置いておいたとして、
わたしたち一人ひとりの「余裕」「遊び」まで排除するのはいかがなものかと思う。

それは、「どうせ死ぬのだから、毎日死に向かって進んでいるだけなのだから、人生なんて生きるだけ無駄だ」という結論になりかねない。

もちろんそれも一理あるし、そう考える人がいてもおかしくない。
けれど、生物学的に、本能的に、人類がこれからも続いていこうとするのなら、そんなに血眼になっても逆効果になることもありうる。

本質はどこにあるのか。

ブログ運営者

ちひろ
ことば、文字、文章。
それはとても恐ろしいものでもあり、うんと心強い味方でもある。

文字はマンガに劣り、写真は動画に劣ると言われる時代で、文字の集積だけがもたらしてくれる「情報」以上の無限の想像のための余白。
そんな文字の持つ力に心躍る方がいたら、ぜひ友達になってください。
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