【長編小説】『夢のリユニオン』概要・目次

星空

二〇一六年七月。

かつての二年五組の同窓生たちは、それぞれに四十歳あるいは四十一歳の夏を迎えていた。
ある者はビール会社に勤める平凡なサラリーマンとして。
ある者は独身を貫く優秀な精神科医として。
ぱっとしない俳優、あるいは五人の育ち盛りの子どもをかかえる母親として。
そして必然としての生活保護を受ける者として。

彼らは特別仲が良かったわけでもその反対でもなかったが、高校卒業後に一同に会する機会は一度も持たれなかった。

そして彼らのもとに、一通の手紙が届けられる。
差出人は不明。その内容は、来る八月三十一日、高校の夏休み最後の日に同窓会を行うというものだった。
同窓会は午後十時から、夢の中で行われる。

そこで彼らはかつての高校二年生の姿に戻ることができる。参加辞退の権利はなく、彼らはただその日にいつもどおり眠ることで同窓会の会場に姿を現すことができるのだという。

クラスの大半がその存在を忘れていた夏休み最終日、同窓会は静かに開始される。
四十歳あるいは四十一歳というのはおそらくは人生で一番忙しいときであり、全員が午後十時に揃って夢の中というわけにはいかない。
徐々に人数が増えてきたころ、幹事である一人の生徒が声を上げる。

「文化祭をやり直さないか」と。

彼らが高校二年生だった年、台風によって文化祭は中止された。
そのために予定されていた二年五組の出し物である「懺悔室」も結局行われないままに終わった。参加者がダンボール製の懺悔室に入り、顔の見えない神父に罪を告白する。

それによって罪がなくなるわけでも軽くなるわけでもないが、告白した者にとってはきっと悪くない作用がある。十七歳の生徒たちはそう信じて、学校側の反対にも屈せずに開催に向けて準備を進めていた。
あの時なくなってしまった「懺悔室」を、二十四年の時を経て開催してはどうか。

あれから二十四年分積み上げた罪を、この夢の中で吐き出してしまうことで、現実の自分たちに浄化作用のようなものがもたらされるのではないか。
過去に取り残されたままになっているしこりを取り除いてくれるのではないか。少なくとも幹事はそう考えていた。

そのようにして、四十五人ぶんの罪の告白が順番に読み上げられていく。

(約10万字)

【目次】
第1章「直線というよりも環状」
第2章「不健全な魂を救う職業」
第3章(1)「不健全な魂を救う職業その2」
第3章(2)「不健全な魂を救う職業その2」
第4章(1)「絶対的平凡と相対的平凡」
第4章(2)「絶対的平凡と相対的平凡」
第4章(3)「絶対的平凡と相対的平凡」
第5章「もともと別の方向を向いて生きていたに過ぎない」
第6章(1)「実際に目の前に現れるものとしての過去」
第6章(2)「実際に目の前に現れるものとしての過去」
第6章(3)「実際に目の前に現れるものとしての過去」
第7章「ただ『今』を生きるものたち」
第8章「やり直しのはじまり」
第9章「知り合い神父への懺悔と、最後の二人」
第10章(1)「誰かの懺悔を肩代わりすること」
第10章(2)「誰かの懺悔を肩代わりすること」
第10章(3)「誰かの懺悔を肩代わりすること」
第11章「五つ下の担任は相変わらず恩師であるか否か」
第12章(1)「学年2トップの分かれ道と交差点」
第12章(2)「学年2トップの分かれ道と交差点」
第12章(3)「学年2トップの分かれ道と交差点」
第13章「あちら側に行くことは、こちら側に居続けることの否定である」
第14章(1)「民と国家の利害の一致としての存在」
第14章(2)「民と国家の利害の一致としての存在」
第14章(3)「民と国家の利害の一致としての存在」
第15章(1)「孤独という肉体的な痛み」
第15章(2)「孤独という肉体的な痛み」

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ことば、文字、文章。 それはとても恐ろしいものでもあり、うんと心強い味方でもある。 文字はマンガに劣り、写真は動画に劣ると言われる時代で、文字の集積だけがもたらしてくれる「情報」以上の無限の想像のための余白。 そんな文字の持つ力に心躍る方がいたら、ぜひ友達になってください。 私はそんな友達を見つけるために、物書きをしているのです。

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