『何者/朝井リョウ』

朝井リョウ。
気になっている作家の1人だった。

わたしよりも1歳年上で、学生の時にすでにデビューして、しかもすでに直木賞まで獲っている。
いわゆる「彗星のごとく現れた新人」ってやつかしら。

今年の4月までサラリーマンをしながら書いていたというから、そのバイタリティには本当に頭が下がる。

朝井リョウと言うと、『桐島、部活やめるってよ』という作品が有名だろう。
それよりも先に、『何者』がわたしの朝井リョウデビューである。

舞台は、就活。しゅうかつ。シューカツ。
今や、その言葉自体が重要なライフイベントにさえなっている。

わたしはまともな就活を経験したことがないけれど、その実態たるや凄まじいものだと思う。
まだハタチそこそこの大学生たちが、ほとんどはじめて向き合うであろう、「自分」。

自分って、何だ?何だ、何だ、何だ?
それぞれが想い、裏を読み、抗い、演じ、悩み、スーツを身にまとった「自分」を他の誰かとは違うんだと、証明する機会。

朝井リョウ。
なんてまっすぐな人なんだろうと思った。

「小説とは、説明しないことだ」なんて批評は、ここではノーサンキューなんだろう。
ここには、全部が書かれている。
耳を塞ぎたくなるくらい、生々しい全てが。

読者に一切の「余白」を与えてくれない。
わたしが好んで読む小説には、必ず「余白」がある。

答えは見せない。読者が想像できる部分を作者が残してくれている。

「怒りのエネルギーを小説にぶつける」
そんなことを、朝井リョウがどこかで言っていた。

そう、この小説からは、とてつもない怒りのエネルギーが伝わってきた。

冷静に分析しながらも、社会をバカにしながらも、自分さえ攻撃対象に入る。

この人には、色々なことが見えている。
見えてしまっているから、でも己を見失わないために、全部を文章に投じている。

そんな、朝井リョウという人のまっすぐさが詰め込まれている。

こういう書き方もあるんだな。
全部にうなずいてしまって、それでも自分のことを言われているようで、参りましたというよりほかなかった。

書いた人

ちひろ
ことば、文字、文章。
それはとても恐ろしいものでもあり、うんと心強い味方でもある。

文字はマンガに劣り、写真は動画に劣ると言われる時代で、文字の集積だけがもたらしてくれる「情報」以上の無限の想像のための余白。
そんな文字の持つ力に心躍る方がいたら、ぜひ友達になってください。
私はそんな友達を見つけるために、物書きをしているのです。

新刊発売中!

できることなら、十四歳という年齢はすっとばしてしまえるのがいい。
冬に元気をなくす母親と、影の薄い善良なフィンランド人の父親を持ち、ぼくは彼らの経営する瀬戸内市の小さなリゾートホテルで暮らしていた。ある時なんの前触れもなしに、ぼくにとって唯一の友達であったソウタが姿を消した。学校に行くことをやめ、代わり映えのしない平穏な日々を過ごすぼくの生活に、少しずつ影が落ちはじめる。

『レモンドロップの形をした長い前置き』
著者:田中千尋
販売形態:電子書籍、ペーパーバック(紙の書籍でお届け。POD=プリントオンデマンドを利用)
販売価格:電子書籍450円(※Kindle Unlimitedをご利用の方は無料で読めます)、ペーパーバック2,420円

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。