高校生だって、考えていないわけじゃない。『桐島、部活やめるってよ』朝井リョウ

あの頃は、どうしてあんなにも自由で、無責任で、どうしてあんなにも不自由だったのだろう。
自分の高校時代をそう振り返ることがある。
きっと、進むべきレールがかっちり引かれていて、少なくともわたし自身はそのレールがたった一つだと信じていて、それから外れることは許されなかった。
自分は自分であり、自分ではなかった。
あるいは、自分を守るために、違う自分をかぶっていた。

そんなこと、高校生のわたしは分析なんてしていなかった。
ただ、一生懸命だったのだ。
世界から振り落とされないように。

だから、こんなふうに、この本の登場人物のようにものごとを考える高校生がいたら、感心してしまう。
でも同時に、「そうだよ、わたしはこんなふうに思っていたんだよ、わたしの知らないところで」と大きく頷くだろう。

世界を知らない分、経験が浅い分、言葉を持たない分、幼い心はむき出しのままで世界と向き合うことを求められる。
「こどもは気楽でいい」
そう大人が羨むほど平和な世界じゃないし、何も考えていないわけじゃない。
ただ、自分でもうまくつかめないだけなんだ。
言葉で伝えられないだけなんだ。

そして、そうしたもどかしさや不安は、決して周りに知られてはいけない。
高校生たち自身も言葉に出来ない気持ちを、ちゃんと言葉にしてくれた。

これで、堂々とおとなたちに見せられる。
わたしたちも、必死で生きてんだよ、と。

朝井リョウ、素直なひと。

本当は、世界はこんなにも広いのに、僕らはこの高校を世界のように感じて過ごしている。 P102

僕らには心から好きなものがある。それを語り合うときには、かっこいい制服の着方だって体育のサッカーだって女子のバカにした笑い声だって全て消えて、世界が色を持つ。 P119

思ったことをそのまま言うことと、ぐっと我慢すること、どっちが大人なんだろう。 P156

一番怖かった。
本気でやって、何もできない自分を知ることが。 P209

投稿者プロフィール

ちひろ
ことば、文字、文章。
それはとても恐ろしいものでもあり、うんと心強い味方でもある。

文字はマンガに劣り、写真は動画に劣ると言われる時代で、文字の集積だけがもたらしてくれる「情報」以上の無限の想像のための余白。
そんな文字の持つ力に心躍る方がいたら、ぜひ友達になってください。
私はそんな友達を見つけるために、物書きをしているのです。

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