作家の心の中をのぞいてみる『ストーリー・セラー/有川浩』

『Story Seller』という題で、すでに何冊か出ているシリーズ。
Story Seller (新潮文庫)
Story Seller〈2〉 (新潮文庫)
Story Seller〈3〉 (新潮文庫)
Story Seller annex (新潮文庫)

これは、いろんな作家たちが「面白いお話、売ります。」という謳い文句で小さなお話を書き、それを一つの本にしているシリーズ。

わたしは、このシリーズのファンだった。
好きな作家が紡ぐ、安心感のあるお話。
新しい作家に出会う、わくわくした気持ち。
こう言っては何だけれど、福袋を買う時の気持ちに似ている。

そして、その『Story Seller』の最初の一冊に収められている、まさしく「ストーリー・セラー」という有川浩のお話。
これは、複雑な思考をすると脳が劣化し、死に至るという難病に犯されたある女性作家の話。
作家を辞めて生きることを選ぶか、あくまでも死ぬまで作家を続けるか。

読んだ時から、強烈な印象を残した作品ではあった。

そして先日ふらりと本屋に立ち寄ってみると、『ストーリー・セラー』がひとつの本になっていた。
『Story Seller』の話に、もうひとつ中編の物語をつけた構成。
迷わず買った。

Side:B
「今度は女性作家の夫が死ぬ話にしてみたら?」
そんな男女のやりとりで始まる。

そして、さすがと言ったところだろうか。
単純な逆転のお話ではないのだ。

確かに冒頭のコンセプトが守られながら話は続いていくのだが、
小説の中に小説が登場し、その中に小説が登場する、ような感じなのだ、たぶん。
だから、読んでいる方からすると、いったいどれが今「ほんとうに」物語の中で起きていることなのかわからなくなってくる。

それが、混乱ではなく、引力として作用しているのだから、この人はすごいなあと思う。

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ことば、文字、文章。 それはとても恐ろしいものでもあり、うんと心強い味方でもある。 文字はマンガに劣り、写真は動画に劣ると言われる時代で、文字の集積だけがもたらしてくれる「情報」以上の無限の想像のための余白。 そんな文字の持つ力に心躍る方がいたら、ぜひ友達になってください。 私はそんな友達を見つけるために、物書きをしているのです。

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