大学のセンセイ的若者論『日本の若者はなぜ希望を持てないのか/鈴木賢志』

小説・エッセイ以外の本は、まず読まない。
本に答えなんて求めていないし、「個人的見解」を超えた一般論や、分析の類に興味がわかないからだ。
だから、特に差し迫った理由がない限り、あまりこういう本には手を出さない。
決して、こういった本を批判しているわけではない。
ただ、わたしが個人的に興味が持てないだけ。

けれど、先日図書館に行って、新刊のところにこの本が立てかけられているのを見て、ふと手にとってみた。
大学の先生が、内閣府の調査を分析しているらしい。
どこまでも個人的な問題であるはずの「希望」というものを、数値データで理由付けしようとしているらしい。
しかも、若者の希望。

まじめな興味半分(あるいは縋る気持ちも少しは含まれていたかもしれない)、おふざけ半分で借りてみることにした。
まあ、あまり読むのに時間もかからなさそうだし。
タダだし。
なんて態度の悪い読者なのだろう。
きっと先生も、こんな奴に読まれるなんて不本意だろう、ごめんなさい。

さて、肝心の内容は、内閣府が2013年に行った「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」という調査の分析だった。
著者がスウェーデンに滞在していたことがあるということから、やや北欧的観点が混じる。

もちろん数値で幸福度や希望なんかを「厳密な意味で」測ることは不可能だけれど、それを一般論に昇華し、政策に反映させるには、ある程度の客観的数値が重要な意味を持つことも頷ける。
合間合間に、著者の人間味がうかがえて楽しい。

日本では、子どもを傷つけたくないから別れないと考える人が多いんだよ、と答えたところ、ドイツはその逆で、子どもの前で自分たちがケンカしている姿を見せたくない、つまり子どもを傷つけたくないから別れるんだ、と言われたことを思い出す。P76

↑ほお。グローバル化で、どんどん外の価値観が入ってきて、たまに混乱します。

(中略)いい親子関係のキーワードは、自立。自立心があるからこそ、人を理解し、愛することができる」と述べているが、日本や韓国では親の側も子の側も、このような自立心を確立できていない家族が多いということかもしれない。P82

↑これには同意。文化もあるけれど、べたべたした親子関係は、人の自立を阻害し、失うことを恐れる気持ちを増幅させ、時に人を弱くさせたり暴力的行為に導きさえする。
孤独や安らぎは、物理的な距離だけで測るものではない。
まあ、日本は土地がないからね。仕方ないです。

さらに、日本の大学生に行なった調査で、「大学在学生・卒業生が考える、学校の意義」という項目が存在する。
ここで、韓国、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、スウェーデンの6カ国の回答で上位を占めたのが、
「一般的・基礎的知識を身に付ける」
「仕事に必要な技術や能力を身に付ける」

だった。
これは、大学という、義務教育をとっくに終えた人々が学校に求める役割としては真っ当なものだろうと思う。

そして、肝心の日本上位二位を占めたのがこちら。
「自由な時間を楽しむ」
「友達との友情をはぐくむ」

めっちゃ笑った。
日本の大学生、ガンバッテ……

そして、極めつけはセンセイのこの一言。

日本の大学で「自由な時間を楽しむ」の割合が最も高かったことを思うと、少しホッとする。P117

うそーーーーーん。
大学のセンセイ、それでいいの?
ほんとに?
確かに、人生において自由な時間はたいせつ。友達も、たいせつ。
でも、大学の「意義」がそれで、教授はそれでホッとしちゃうわけですか。。。。
なんだかに必死こいて大学に入った自分がバカみたいです。
いや、だいじょうぶ。これは日本の「多くの学生」の考えで、一人の教授の意見で、全員に当てはまるものではないはず。

一方で、「新卒一括採用制度の功罪」の部分では、
「学歴によって大きな希望の差が生じたり、大学で技能を身に付けるよりも自由な時間を過ごすことを優先させる学生が増えたりするという結果になっている」
と、(たぶん)学生の学業への熱意の低さを嘆いている。
このひと、いったい何が言いたいのだろう。

希望のないグループでは「子どもは欲しくない」という回答の割合が25%とかなり高い。
(中略)
あるいは、自分が将来に希望を持っていないのに、その将来を生きなくてはならない子どもをつくるなんてとんでもない、とうことだろうか。P185

↑この発想に至ってくださったのは、感無量。
そうですね、自分が希望持てないのに、愛する子どもに「さ、世知辛い世の中に産んであげたよ。感謝してね、あと、頑張ってね☆」なんて酷すぎるもの。
種の保存的にはアレですけど、今は医療とかも発達してますし、人間必要以上に長生きしている気がしますし、総量的には十分足りてるんじゃないでしょうか。

まあでも、基本的には主観を入れず、数値データとそこから読み取れる考察、みたいなものをまとめた本でした。
大学の先生は頭がとても良いと思うので、わたしがここから読み取れなかったこともたくさんあると思います。
結局のところ、特に政治をするつもりもないので、わたしはわたしが持ちたい時に、持ちたいように、「希望」ってやつを持てばよいのでしょう、たぶん。

以上です。

The following two tabs change content below.
ことば、文字、文章。 それはとても恐ろしいものでもあり、うんと心強い味方でもある。 文字はマンガに劣り、写真は動画に劣ると言われる時代で、文字の集積だけがもたらしてくれる「情報」以上の無限の想像のための余白。 そんな文字の持つ力に心躍る方がいたら、ぜひ友達になってください。 私はそんな友達を見つけるために、物書きをしているのです。

新刊発売中!

できることなら、十四歳という年齢はすっとばしてしまえるのがいい。
冬に元気をなくす母親と、影の薄い善良なフィンランド人の父親を持ち、ぼくは彼らの経営する瀬戸内市の小さなリゾートホテルで暮らしていた。ある時なんの前触れもなしに、ぼくにとって唯一の友達であったソウタが姿を消した。学校に行くことをやめ、代わり映えのしない平穏な日々を過ごすぼくの生活に、少しずつ影が落ちはじめる。

『レモンドロップの形をした長い前置き』
著者:田中千尋
販売形態:電子書籍のみ
販売価格:450円(※Kindle Unlimitedをご利用の方は無料で読めます)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。