あらすじから物語をつくりだす『ヒア・カムズ・ザ・サン/有川浩』
七行のあらすじ。
物や場所から、人間の記憶が見える能力を持つ、30歳の編集者。
彼は同僚と共に、その同僚の父を迎えに成田空港へ。
たった七行のあらすじから、それも自分がつくりだしたのではないそれから、有川浩という作家は物語をつくりだす。
物語を、見つける。
その七行を目にした時から、彼女の頭には無数の物語が広がり、それを丁寧にひとつひとつ手にとって確かめてから、言葉に置き換えていく。
感情。感情。感情。
それを題材にしている作品であることは横においても、有川浩の作品からは強烈な作者の感情を感じることが多い気がする。
けれど、決して押し付けがましくない、ちゃんと登場人物に乗り移らせた感情。
『ヒア・カムズ・ザ・サン』には、ふたつの物語が掲載されている。
ひとつは、そのあらすじ七行から有川浩自身がつくりだした物語。
そして、もうひとつは舞台版のそれから着想を得た物語。
同じあらすじから、その登場人物も、行動も、事実も、ここまで違うものになりうる。
現実はひとつを選ばなくちゃならない。
でも、物語ならいくつもの可能性を形にできる。
わたしたち現実の人間が決して経験することのできない、パラレルワールド。
あまり変わった作品ではない。
きれいな、家族愛の物語。
書いた人
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ことば、文字、文章。
それはとても恐ろしいものでもあり、うんと心強い味方でもある。
文字はマンガに劣り、写真は動画に劣ると言われる時代で、文字の集積だけがもたらしてくれる「情報」以上の無限の想像のための余白。
そんな文字の持つ力に心躍る方がいたら、ぜひ友達になってください。
私はそんな友達を見つけるために、物書きをしているのです。
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