『きみの友だち/重松清』

子どもは純粋だ。

だから、子どもは残酷だ。

この言葉を、皆さんならどう考えるのだろうか。

自らの未熟さゆえに他人を傷つけ、傷つけられる他人を見て、自らが被害者にならなかったことを喜ぶ。
いつ回ってくるやもしれぬ「被害者」の名札を巧みに避けるべく、時に図らずも「加害者」として名乗りを上げる。

そんな場面を繰り広げるのは、非行に走る「悪い子」だけではない。むしろ「いい子」こそが、そのような期待を親や友人から受けていると感じる子の方が、集団の中に紛れた時の残酷さを増すように思える。

クラスの人気者
そんな人気者のお側に控える劣等感の塊
事故で障害を持つことになってしまった女の子
八方美人
主人公にはなれない傍観者

親にとってはかけがえのない子どもであったはずなのに、集団の中に入るやいなや、それぞれの役割を演じ始める。

子どもがこんなにも暗く、深いことを考えているはずがない。と、思うかもしれない。

けれど、子どもの世界というのは理性が欠けている分、大人の社会よりも生々しい弱肉強食なのかもしれない。

人はいつから大人になるのだろう。

そして、大人になるとはどういうことなのだろう。

わたしはうまく「おとな」になれているのだろうか。子どもの前に出ても恥ずかしくない大人に。

そんなことを、飾らずにむきだしで見せてくれる重松清は、世代や性別を超えて人の心を知り尽くしている。

「どうして私の考えていることがわかるのだ。うまく隠しているはずの、暗く汚い部分が」と、ぞっとすることもしばしばある。

それでもキラキラとした美しさを損なわずに、感情の揺れ動く人間であることを肯定させてくれる彼の作品は、現実と向き合う勇気をくれる。
中でも『きみの友だち』は、誰もがこの中の誰にもなりうる、リアルな世界だった。

個人的には『流星ワゴン』が一番好きな作品だけれど…

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ことば、文字、文章。 それはとても恐ろしいものでもあり、うんと心強い味方でもある。 文字はマンガに劣り、写真は動画に劣ると言われる時代で、文字の集積だけがもたらしてくれる「情報」以上の無限の想像のための余白。 そんな文字の持つ力に心躍る方がいたら、ぜひ友達になってください。 私はそんな友達を見つけるために、物書きをしているのです。

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