笑ってばかりじゃいられない『ようこそ地球さん』星新一

※本記事は多少のネタバレを含みます。

「ショートショート」という分野を開拓した第一人者、星新一。
名前だけは聞いたことがあったものの、恥ずかしながら読んだのは初めて。

そして感想。
これが、ほんとうに、ほんとうに、昭和三十六年以前に書かれた作品ばかりなのか。
わたしの父の生まれた年に?

そのくらい、色あせない。
むしろ現代だからこそ、妙な現実感を持ってわたしたちに迫る。

SF。
その中に描かれる、人類の可能性的な未来。
あるわけないじゃないか、と笑い飛ばしてもいられないあたりが絶妙なのだ。

人間なら、やりかねない。
そして、宇宙を地球に置き換え、人間を動物たちに置き換えてみると、人間は侵略する者であるというふうにも取れる。
トリックや結末がきちんと決まっているものよりも、読む側が自由に想像を膨らませられる作品を、私は好む。

「人生の目的は、子孫を作ることと、死ぬことだけだとわかってきたらしい」 P94

これは、人間が死んだ後に天界へと導く天使の一言。
そう言われると、生きる意味だとか、人とは違う自分の人生だとか、そういう議論をするのがばからしくなってくる。
それでもわたしは、どうしても人生に意味を求めることをやめられない。

むかしの人びとは宗教によって、この安心を得ていました。だが、科学はこれを消し去った。考えてみれば、科学とは残酷なものでした。寿命をひきのばして、そのかわり、あの世への安心感を奪ったのですから。 P415

最新の科学は、あの世への恐怖を安心感に変えるどころか、憧れにしてしまいましたというお話。

感情と理屈は必ずしも一致せず、かくのごとくずれがある。人間は、そのいいかげんな点が面白いのではないだろうか。 P438 (解説より)

心理学の権威、河合隼雄氏も同じようなことを言っていた。
心理学者と作家には、どこかしら共通した何かを見出さずにはいられない。

ブログ運営者

ちひろ
ことば、文字、文章。
それはとても恐ろしいものでもあり、うんと心強い味方でもある。

文字はマンガに劣り、写真は動画に劣ると言われる時代で、文字の集積だけがもたらしてくれる「情報」以上の無限の想像のための余白。
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