誰かは誰かを見ている、自分とは違う見方で。『星やどりの声』朝井リョウ

朝井リョウ。
とても繊細な人。

それでいて、よしもとばななのような繊細さではない。

「普通」の組織や社会を描きながらも、関わる人の心を描く。
誰もが誰かを見て、羨み、自分と比較する。

そしてその想いは、行き交う。

この人は、葛藤しているんだ、と文章から伝わってくる。
社会への怒り、青春の葛藤、ひとりが懸命に生きること。

最近好きな上田岳弘とは、真逆の視点でものを書いている。
個。
個。
個。

誰もが、外からはわからない、いろいろなものを抱えて生きている。

どうしてこんなにもおおきなものを、自分一人で抱えて生きて行かなくてはならないのだろう?
と、自分ひとり分の重さに愕然とすることがある。
それでも、この人はちゃんと血の通った人間を見ている。
たぶん、希望を捨てずに。

父親を亡くした、6人きょうだいの物語。

きょうだいって、いいなあ。
直接は血がつながってないのに、ちゃんとつながっている。

全然違うのに、交じり合う。

撮った写真はすぐに見られなくたっていい。現像まで時間がかかってくれたほうがいい。
少しはドキドキさせてほしい。そこに何も写ってはいないということを、すぐに、目の前に突きつけないでほしい。 P78

書いた人

ちひろ
ことば、文字、文章。
それはとても恐ろしいものでもあり、うんと心強い味方でもある。

文字はマンガに劣り、写真は動画に劣ると言われる時代で、文字の集積だけがもたらしてくれる「情報」以上の無限の想像のための余白。
そんな文字の持つ力に心躍る方がいたら、ぜひ友達になってください。
私はそんな友達を見つけるために、物書きをしているのです。

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できることなら、十四歳という年齢はすっとばしてしまえるのがいい。
冬に元気をなくす母親と、影の薄い善良なフィンランド人の父親を持ち、ぼくは彼らの経営する瀬戸内市の小さなリゾートホテルで暮らしていた。ある時なんの前触れもなしに、ぼくにとって唯一の友達であったソウタが姿を消した。学校に行くことをやめ、代わり映えのしない平穏な日々を過ごすぼくの生活に、少しずつ影が落ちはじめる。

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