『重力ピエロ/伊坂幸太郎』

「あなたは家族のことを愛していますか?」

この質問に心の底から自信を持ってYESと答えられる人は、それがどうしてか説明できるだろうか。

「愛に理屈や説明なんていらないんだ」
そういう人もいるかもしれない。

けれど、敢えて聞いてみたい。

「あなたはどうして家族を愛しているのですか?」

答えはもちろん、十人十色だろう。

「自分を守ってくれるから」
「そばに居てくれるから」
「自分に愛をくれるから」
「ただ、愛しているから」

最後の答えを言った人は、本当の愛をわかっている人なんだと思う。

「血が繋がっているから」
は、どうだろう?

以前、私の妹に「どうして家族とは結婚できないのかな」と尋ねたことがある。
私は、今の家族が本当に大好きなのに、どうしていつか別れなくちゃならないんだと憤慨していた時期があった。

妹の答えはこうだった。

「家族は血が繋がっているから、もうそれ以上近い存在にはなれないんだと思う。血の繋がりは、最大のI love youだから」

この言葉に、僕はこっそり泣いたのだ。

家族には、無限の愛がある。

それでは、血が繋がっていなかったら?
家族の一人が、生物学上、遺伝子学上、全くの赤の他人だったら。

それでも同じように
「ただ、愛しているから」と言うことができるのだろうか。

そして、その異端児のような存在が自分だった場合、自分は自分の存在を認めることができるのだろうか。

伊坂幸太郎のこの本は、僕にそんな問いかけをくれた。

読了後、守るべきものや大切なものは、人によっても状況によっても大きく変わり、うまく定義付けできないのだということに気付かされた。

それでも。
やはり「きょうだい」ってのは最強なんだ。

お互いが向き合って愛の言葉を囁き合うのは恋人かもしれないけれど、
お互いの背中を重ねあわせて、相手が倒れそうになった時に支えるのは「きょうだい」なのかもしれない。

そして、父や母の存在。
人間は、自分という個別の存在の上に、父や母、兄や弟、友人や恋人なんかの称号を重ねていく。

そういった関係性の中に、愛を見出していく。

その基準は。

数字にはできない。

投稿者プロフィール

ちひろ
ことば、文字、文章。
それはとても恐ろしいものでもあり、うんと心強い味方でもある。

文字はマンガに劣り、写真は動画に劣ると言われる時代で、文字の集積だけがもたらしてくれる「情報」以上の無限の想像のための余白。
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