『マリカのソファー/バリ夢日記 /吉本ばなな』

幼いころの悲しい記憶から多重人格を引き起こした少女。
そしてそんな彼女を見守る近所のおねえさん。

2人がバリ島に出掛ける。

何か大きな事件があるわけでもないけれど、ただ平凡に何も感じず過ごすのでもない。

それぞれがじっとバリを見つめて、バリを感じて、自分の音を聴く。

耳をそばだてずとも、体に染み渡ってくる心の声。

心と肉体は切り離せないものだから、なんとかかんとかこの体とうまくやってくしかないのだ。

少女はあまりに幼く、そしてあまりに達観している。

人は複雑で、シンプル。

この本は、吉本ばなな本人がバリ島に行った時の体験が元になっている。

物語のあとに、と言っても物語は本の3分の1くらいなのだが、彼女のバリ島旅行の日記がついている。

あちらこちらに小説に登場したシーンがありありと綴られていて、「ああ、この物語は、この人の目や耳や舌を通じて作られたのだなぁ」と感じる。

作家というのは、どのようにして物語を作るのだろう。

それは魔法のようでもあり、肉体労働のようでもあり、日々の会話のようでもある。

旅行記って、いいなあ。

投稿者プロフィール

ちひろ
ことば、文字、文章。
それはとても恐ろしいものでもあり、うんと心強い味方でもある。

文字はマンガに劣り、写真は動画に劣ると言われる時代で、文字の集積だけがもたらしてくれる「情報」以上の無限の想像のための余白。
そんな文字の持つ力に心躍る方がいたら、ぜひ友達になってください。
私はそんな友達を見つけるために、物書きをしているのです。

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