ねえ、それって意味あるの?『ままならないから私とあなた』朝井リョウ
あなたの言い分もわかる
あなたの言い分もわかる
どちらもわかるし、どちらを切り捨てるなんてわたしにはできない
でもわたしにもそれなりに言い分があって、それってわかってもらえるのかな
そういうたぐいのもやもや。
朝井リョウさんの本は、そんなふうにみんなに平等に意見を言わせてくれる。
「こんなふうに考える人もいるんじゃないの」そうやって付けいる隙がない。
それは彼の大きな大きな強みであり、共感を呼ぶ鍵であり、同時に彼の作品の弱さなのかもしれない。
でも少なくとも、彼の紡ぎだす言葉はみんなに寄り添ってくれる。
※本記事は引用を含みます
『レンタル世界』
人間関係を借りられるレンタル世界。
なにもかもをさらけ出せる関係を重視し、うそもので塗り固められた世界を否定する元ラガーの男。
たとえ一時的にでもその場を乗り切る人間関係を必要とする人がいることを否定しない女。
表面には見えない人の弱さに切り込んだ短編。
『ままならないから私とあなた』
表題作。
主に仲の良い少女二人の小学生〜大人になるまでの関係を描いたもの。
「ねえ、それって意味あるの?」「そういうの、効率悪くない?」どこまでも効率を重視し、無駄を省きながら生きている少女。
一方で不器用ながらも自分の感覚を重視し、効率ばかりの考え方に疑問を持つ少女。
極端な効率化を求めているように見える天才少女は、決してフィクションの中のお話ではないと思う。
人間はどこまで行くのか――。
そんな根本的な問いを改めて認識させてくれる。
人々は目を背けようとしているのだろうか、自分たちの信じる「進化」から。
我々の目指す「成長」はどこへ行き着くのか。
それともそんなことも含めて、人間は流れに身を任せるしかないのだろうか。
できないこととか、わからないこととか、コントロールできないこととか……そういうものが自分にもあること、そんなに怖がらなくていいんだよ P249
専業作家になった朝井さんが、今後どんなふうに世界を見ていくのか、楽しみにしています。
【単行本】
【Kindle版】
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ことば、文字、文章。
それはとても恐ろしいものでもあり、うんと心強い味方でもある。
文字はマンガに劣り、写真は動画に劣ると言われる時代で、文字の集積だけがもたらしてくれる「情報」以上の無限の想像のための余白。
そんな文字の持つ力に心躍る方がいたら、ぜひ友達になってください。
私はそんな友達を見つけるために、物書きをしているのです。
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