クリスマスへの旅立ち 『急行「北極号」』クリス・ヴァン・オールズバーグ

幼いころ、絵本を読んでもらった、あるいは自分で読んだ経験はあるだろうか。

幼稚園で何があったのか、誰と友だちだったか、どんな子どもだったのか、家族がどんなふうだったか、当時の思い出は何ひとつ覚えていないくせに、絵本の中身だけはくっきりと頭に残っていたりする。

幸いなことに、うちには店を開けるほどたくさんの絵本があった。
年齢ごとに、シリーズで。

そしてそのお話の数々は、直接的に役に立つというものではないけれど、今でもわたしのこころにしっかりと根をおろしている。
それらはわたしが大地を踏みしめる時、風を感じる時、物を口にする時、涙をながす時、ひっそりとそばにいてくれる。

そういうのって、おとなになってからじゃ、なかなか純粋に心には入ってきにくいのだと思う。

けれど、何ごとも遅すぎるということはない。
大人になったわたしたちが読む時、絵本はまた違った側面を見せてくれる。
深読みしたくなってしまう大人に、惜しげもなく奥深くを見せてくれる。

そしてしっかりと癒していく。

仕事に疲れた時、
育児や介護に疲れた時、
恋人との関係に疲れた時、
自分に疲れた時、
何もないことに疲れた時、

好きなことすらする元気がない時、

ふと絵本を手にとってみるというのは、わりに効果的な癒しになるのではないだろうか。

『急行「北極号」』は、ありふれたといえば、まぁありふれたクリスマスのお話である。

けれどそこにはいきいきとした、子どもたちの人間らしい姿が描かれ、現実離れした幻想的な雪の景色が描かれる。
絵本は、いい。
わたしたちに、空想する「余地」みたいなものをたっぷりとくれる。

ブログ運営者

ちひろ
ことば、文字、文章。
それはとても恐ろしいものでもあり、うんと心強い味方でもある。

文字はマンガに劣り、写真は動画に劣ると言われる時代で、文字の集積だけがもたらしてくれる「情報」以上の無限の想像のための余白。
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