『虹/吉本ばなな』

吉本ばなな「世界の旅」シリーズ、4作目にしてラスト。

今回の舞台は、タヒチだ。

本のあとがきで、彼女はこう綴っている。

「タヒチというところはなかなか奥が深く、一週間の滞在ではその懐のほんの一部さえも開いて見せてはくれませんでした。それでもその奥の深さだけは感じることができたので、私は『一週間の取材で即興的な小説を書けるような場所ではないなあ』と思いました。」

そんなわけで、今回のタヒチの旅から彼女が生み出した作品は、日本のタヒチ料理レストランが舞台となる。

ストレートにタヒチを描写するわけではないけれど、話のあちらこちらにタヒチが見え隠れする。

そのレストランで働く主人公が、休暇を取ってタヒチに旅行する間も、タヒチに特別な思いがある老婦人との会話が中心となっている。

結局タヒチはどんな場所だったのか。

彼女自身の旅からはあまりその全体像が見えてこない。

それでも、彼女を取り巻くタヒチ好きな日本人たち、ほんの少しの自然描写から、その魅力は充分に伝わってきた。

それに、巻末の写真たちが、さらにその魅力を確固としたものにしてくれた。

このシリーズ4巻の中で、唯一「行きたいなぁ」と思った国だった。

投稿者プロフィール

ちひろ
ことば、文字、文章。
それはとても恐ろしいものでもあり、うんと心強い味方でもある。

文字はマンガに劣り、写真は動画に劣ると言われる時代で、文字の集積だけがもたらしてくれる「情報」以上の無限の想像のための余白。
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