『スイートリトルライズ/江國香織』

愛ってなんだ。

それは、飢えや渇きとは違うのか。

愛とはどんなかたちをしていて、どんないろをしていて、どんなにおいを放っているのだろう。

純粋な愛が自分の生活の全てを満たすことは、許されないのか?

きっと、自分自身が許さないのだろう。

夫とは別に、肉体関係を持つ男性がいる。

それは彼女にとって特別な意味を持つだろうか。

夫との間だから、守らなくちゃならないものがある。
そこには甘く小さな嘘がいくつも存在する。

「私はあなたに絶対に嘘はつけない。あなたも私に嘘をついてくれないもの」

その後、彼女は真実を捉える一言を放つ。

「そしてね、なぜ嘘をつけないか知ってる?人は――」

この世界では、誰もが嘘を抱えて生きているのかもしれない、と思わざるをえない一冊だった。

初めての作家さんの本を読む時は、いつもどきどきする。

誰か知らない人の、むき出しの心に、裸足で入っていくような感じ。

江國香織さんのそれは、ひんやりと冷たく、それでも心地よかった。

投稿者プロフィール

ちひろ
ことば、文字、文章。
それはとても恐ろしいものでもあり、うんと心強い味方でもある。

文字はマンガに劣り、写真は動画に劣ると言われる時代で、文字の集積だけがもたらしてくれる「情報」以上の無限の想像のための余白。
そんな文字の持つ力に心躍る方がいたら、ぜひ友達になってください。
私はそんな友達を見つけるために、物書きをしているのです。

新刊発売中!

できることなら、十四歳という年齢はすっとばしてしまえるのがいい。
冬に元気をなくす母親と、影の薄い善良なフィンランド人の父親を持ち、ぼくは彼らの経営する瀬戸内市の小さなリゾートホテルで暮らしていた。ある時なんの前触れもなしに、ぼくにとって唯一の友達であったソウタが姿を消した。学校に行くことをやめ、代わり映えのしない平穏な日々を過ごすぼくの生活に、少しずつ影が落ちはじめる。

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