ユートピアなのか、ディストピアなのか『太陽・惑星』上田岳弘

太陽・惑星

わたしたちは過去の歴史を学び、今を生き、そして未来を夢想する。
それは、人間にとって時間軸が不可逆的に、一本だけ存在しているから。

時間はそのほかの資源と同様に有限であり、人生は一度きりだ。

人の欲は尽きず、人間は永遠の生を手に入れるために研究を惜しまず、そして一人の例外もなく死んでいった。
永遠の生を手に入れるために存在する人生に、意味などあるのか?

それでは、どのような目的のために存在する人生なら、意味があるのだろうか。ということになる。

そして人生を順調に引き延ばすことに成功しているわけだけれども、長い人生を暮らしていくためには金がいる。
自然な成り行きとして、人々は「錬金術」を追い求めた。

いや、錬金術を完成させたいがための、永遠の生か?

ともかく、手段と目的は混ざり合い、「永遠の生」と「錬金術」は長いあいだ人類の大目的となってきた。

二編の話が収められたこの本は、「わたしたちの行き着く先」になりうる可能性のひとつを提示する。

『太陽』では、「永遠の生」の方を克服した人類が、太陽のエネルギーを使って最後の目的に向かうさまを描き出す。
単行本化した上田氏の作品の中で、この話が一番好きだ。

『惑星』では、最後に残った人類であるところの「最強人間」と「最終結論」が議論する。

なにが、わたしたちにとって「よきこと」であるのか。

「最高製品」悪ではなくとも、不自然ではあるかもしれない。
あるいは時代が下れば、不自然は自然になるのか。

そのあたりの見分けが、うまくつかないでいる。

投稿者プロフィール

ちひろ
ことば、文字、文章。
それはとても恐ろしいものでもあり、うんと心強い味方でもある。

文字はマンガに劣り、写真は動画に劣ると言われる時代で、文字の集積だけがもたらしてくれる「情報」以上の無限の想像のための余白。
そんな文字の持つ力に心躍る方がいたら、ぜひ友達になってください。
私はそんな友達を見つけるために、物書きをしているのです。

新刊発売中!

できることなら、十四歳という年齢はすっとばしてしまえるのがいい。
冬に元気をなくす母親と、影の薄い善良なフィンランド人の父親を持ち、ぼくは彼らの経営する瀬戸内市の小さなリゾートホテルで暮らしていた。ある時なんの前触れもなしに、ぼくにとって唯一の友達であったソウタが姿を消した。学校に行くことをやめ、代わり映えのしない平穏な日々を過ごすぼくの生活に、少しずつ影が落ちはじめる。

『レモンドロップの形をした長い前置き』
著者:田中千尋
販売形態:電子書籍のみ
販売価格:450円(※Kindle Unlimitedをご利用の方は無料で読めます)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。