わたしたち大人は、子どもたちのイノセンスに救われている『誕生日の子どもたち』トルーマン・カポーティ

誕生日の子どもたち

子どもという存在は、掴みどころがない。

純真無垢であどけないところがあると思ったら、
動物的で衝動的な発言をする。

一方で、実に計算高く大人を欺いたりもする。

しかし、やはり彼らから見た世界は特別な輝きを放っている。
それはイノセントの発する透明な光であるのだろう。

トルーマン・カポーティは、そんなイノセントをいびつに抱えたまま大人になった人物とも言える。

両親の愛情が欠落した環境で育った彼の作品には、祖父母くらいの年齢の人が多く登場する。

社会に出てからしっかり一人で生きていけるように、ある意味で現実的に子どもを育てる必要のある両親とは違い、祖父母は孫に対してただ純粋な愛を注ぐことができる。
それが「ほんとうの祖父母」でない場合は特に。

『クリスマスの思い出』では、五十歳以上も歳の離れた遠縁のいとこである女性が登場する。
それも、主人公の親友として。

六歳、七歳の彼はまだ彼女との閉じた関係を続けている。
しかし同時に、その関係が遠からず変わってしまうであろうという予感を含んでいる。

彼らは一年間こつこつと貯めたお金を遣い、お酒のちょっぴり入ったフルーツケーキを三十本も焼く。
クリスマスの伝統だ。

その限定的な、だからこそ目を細めたくなるような美しい光景。

そんなイノセントな物語が詰まった、カポーティの短編集。

誓ってもいいけれどね、最後の最後に私たちははっと悟るんだよ、神様は前々から私たちの前にそのお姿を現わしておられたんだということを。物事のあるがままの姿 P134

わたしたちは、わたしたち大人は、子どもたちのイノセンスに救われているのだ。

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