自分が何者かわからなくなったら、ここに一つの答えがある『教団X』中村文則

教団X

自分とは何か、
善悪とは何か、
神とは、運命とは。

生きていれば、わたしたちの「意識」は疑問を抱き、悩み、信じる。

では「意識」とは何か?

かつて自分のもとを去った女性の居場所を追ううちにたどり着いた奇妙な宗教団体。
その教祖である松尾は、ブッダや量子力学の話を通じて、人間存在を説いている。

それは感謝哲学などのように押し付けがましくもなく、一方でただの科学講義でもない。
二つを分けて考えることが、そもそもナンセンスなのかもしれない。

彼の講義は、答えを求める我々の身体に優しい痛みを伴って、答えを提供してくれる。
最近悩んでいたことが、うまく言葉にできなかったことが、すべてここに書かれていた。

そして接触してくるもうひとつのカルト教団。
動物的な性の開放を謳う彼らは、目に見える特定の教えを持たない。

目立ってどこかへ個人的攻撃をしかけるわけでもないのに、どうしてかわたしたちは彼らを受け入れることができない。

人間には文明があり、性はそのように開放されるべきではないと「意識」が抗う。

「本質」を知りたい人間に、間違いなくある一つの答えを提示してくれる。

今、あーだこーだと思っているこの意識「私」は、自分がやることも、何かを思うことも実は決定していない。決定していると思い込んでるだけで、実は私達が認識できない領域、つまり脳の決定を遅れてなぞってるだけなんです。 P53

いわば人間の身体の構成物は、大昔からの使い回しであると。P139

最後、478ページから始まる松尾の遺言ビデオ。
そこには人間のすべてが語られ、また何も語られない。

目が釘付けになり、この本を読んでいるときはほとんどまる二日間現実的なものごとに手がつかなかった。

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ことば、文字、文章。 それはとても恐ろしいものでもあり、うんと心強い味方でもある。 文字はマンガに劣り、写真は動画に劣ると言われる時代で、文字の集積だけがもたらしてくれる「情報」以上の無限の想像のための余白。 そんな文字の持つ力に心躍る方がいたら、ぜひ友達になってください。 私はそんな友達を見つけるために、物書きをしているのです。

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