『冷たい晩餐/ヘルマンコッホ』
最近、あまりご紹介したいと思える本に出会えていなかったのですがーー
久々に戦慄を感じましたので。
まだ新しい本です。
図書館でたまたま見つけました。
帯にはこんなふうに書いてあります。
「予約が取れない人気レストランで食事を楽しむ二組の夫婦。
彼らの話題は、それぞれの息子たちが起こした陰惨な事件についてだった。
真実を公表するべきか?それとも隠蔽し続けるべきか?
そして夫婦のとった驚愕の行動とは?」
息子が事件を起こしたら。
それも、かなり悪質なやつ。
親であるあなたはどうするだろう?
とにかく叱りつけ、警察にその身柄を差し出すだろうか
どこまでも息子のしたことを正当化し、味方しようとするのだろうか
息子はあなたに何を求めている?
息子はあなたのどんな背中を見て育った?
あなた自身が、これまでも暴力的素質を持った人物だったら?
主人公の目から語られる描写は、果たして真実なのだろうか。
もちろん、この世には真実など存在し得ないのかもしれない。
すべては個人の勝手な解釈に委ねられるのかもしれない。
それでも。
この物語の描き出す世界は狂っている。
何もかもが反吐の出るようなモダニズムの象徴で、
それを精緻に言葉にしている彼自身が突然、世界に刃を向ける。
ディナーのフルコースの順に沿って物語が進行していく様は、静と動の共存だ。
そこで思考と行動を繰り返す、ちょっと奇妙な主人公。
変に共感してしまう部分もあるはずだ。
それとも私が狂っているのか?
ハッピーエンドでも、バッドエンドでもない、そんな食後酒があなたを待っている。
書いた人
-
ことば、文字、文章。
それはとても恐ろしいものでもあり、うんと心強い味方でもある。
文字はマンガに劣り、写真は動画に劣ると言われる時代で、文字の集積だけがもたらしてくれる「情報」以上の無限の想像のための余白。
そんな文字の持つ力に心躍る方がいたら、ぜひ友達になってください。
私はそんな友達を見つけるために、物書きをしているのです。
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できることなら、十四歳という年齢はすっとばしてしまえるのがいい。
冬に元気をなくす母親と、影の薄い善良なフィンランド人の父親を持ち、ぼくは彼らの経営する瀬戸内市の小さなリゾートホテルで暮らしていた。ある時なんの前触れもなしに、ぼくにとって唯一の友達であったソウタが姿を消した。学校に行くことをやめ、代わり映えのしない平穏な日々を過ごすぼくの生活に、少しずつ影が落ちはじめる。
『レモンドロップの形をした長い前置き』
著者:田中千尋
販売形態:電子書籍、ペーパーバック(紙の書籍でお届け。POD=プリントオンデマンドを利用)
販売価格:電子書籍450円(※Kindle Unlimitedをご利用の方は無料で読めます)、ペーパーバック2,420円
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『レモンドロップの形をした長い前置き』
著者:田中千尋
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