底抜けにクールな男『オンブレ』村上春樹

オンブレ

西部劇は見ないし、男くさいハードボイルドものは苦手だ。

だから、『オンブレ』を手に取ったのも、「村上春樹が翻訳した作品だしな。読んでおかないとな。しょうがないな」という感じだった。(ものすごく失礼ですね、申し訳ございません)

幼少期を「アッパチ」と呼ばれるインディアンのような種族に育てられた伝説の男、オンブレ。
オンブレとは、スペイン語で「男」という意味だ。

まさに男の中の男、オンブレ。
本名はジョン・ラッセルだが、これもあとから付けられた名前だ。

でも思うのだけれど、飛び抜けて存在感のある個人を指すとき、そこに名前は必要ないのかもしれない。

ただ、「彼」、「あいつ」、「あの男」といえば、皆が彼を認識するような場合。

はじめのうち、正直言って読み進めるのがつらかった。
想像通りのがちがち西部劇ではなかったけれど、無骨で昔ながらの男性もの、という感じがしたのだ。

けれど、一行が賊に狙われたところあたりから、「おや」という感じになる。
ページを繰る手が止まらなくなるのだ。

オンブレは、決して紳士なわけでも、優しいわけでもない。

ただ底抜けに「クール」なのだ。

もう地球上から絶滅してしまった人種。
そんな男らしさが、オンブレに凝縮されているのだ。

そしてオンブレの魅力は、クールなだけではない。
ある意味でそれが彼の命取りとなるのだけれど、それはぜひ本を読んでみてください。

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ことば、文字、文章。 それはとても恐ろしいものでもあり、うんと心強い味方でもある。 文字はマンガに劣り、写真は動画に劣ると言われる時代で、文字の集積だけがもたらしてくれる「情報」以上の無限の想像のための余白。 そんな文字の持つ力に心躍る方がいたら、ぜひ友達になってください。 私はそんな友達を見つけるために、物書きをしているのです。

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