くそったれ同窓会『世界のすべての七月』ティム・オブライエン

同窓会

過去の方向を向きながら生きる人たちのことを、わたしは理解することができない。

彼らは、常に過去の中に生きているか、
あるいは時折見える過去の明かりを頼りに生きるのだ。

今の自分は、あの頃よりも幸せか?
年を重ねるにつれて、その答えは「No」に近づいていく。

たぶんそれは、60歳を超えたあたりからまた「Yes」に舵を切り直すのだろう。

学生時代の自由を失い、
結婚して子供を産めば時間とお金を失い、
人生の折返しともなれば後戻りはできず、
50を過ぎれば身体にガタがくる。

思うに、50歳までというのは、緩やかな喪失の過程なのだ。

そんなときに同窓会なんてするものじゃない。
少なくとも、自分がめいいっぱい幸せじゃないときには。

ただ、人生の足の引っ張りあいをするはめになってしまう。
他人の不幸を願い、幸福を妬む自分に嫌気がさす。

こういう考え方って、悲観的にすぎるかしら?

『世界のすべての七月』は、なにも50歳を超えた人だけのためにある小説じゃない。

大学時代にあれほど毎日一緒に暮らした彼らは、今どこで何をしているのだろう。

地球のどこかにいることは間違いないはずなのだけれど。
死んでさえいなければ。

50歳の同窓会には、多くの確率で死者が存在する。
自殺、事故死、病死。

それから、あの頃には想像もしなかったような、あらゆる現実をまとうことになる。

キャリア、結婚と離婚、不倫と癌、ダイエットと封印された恋。

逃げた者、立ち向かった者。

失敗した者、成功した者。

そのすべてを引っさげて、なおも肩を組み合えるだけの「友情」がそこにはあるだろうか?

同窓会は、次の問いに対して、ごまかしようのない自分の答えを強要する。

「とにもかくにも、君はいま幸せかい?」

書いた人

ちひろ
ことば、文字、文章。
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