想像力の権利を取り返せ『タイタンの妖女』カート・ヴォネガット・ジュニア

タイタンの妖女

久しぶりに。
本当に久しぶりに。

魂が興奮して、心臓が鼓動する本に出会った。

カート・ヴォネガット(・ジュニア)。
名前だけは聴いたことがあったのだけれど、読む機会がこれまでなかった。

『タイタンの妖女』は、著者の初期の作品である。

まず最初に。

この本を本屋さんで見つけようと思ったら、おそらく「海外作家」か、「SF」のカテゴリーで見つけることになるだろうと思う。
なぜなら、物語の内容はとても「未来的」であり、「ありそうもない話」である印象を受けるから。

けれど、一度ページを開くとその感覚は薄れる。

解釈によっては、今の時代にとてもリンクしているようにも思えるからだ。

一方で、物語をリーズナブルに、つまり論理的に客観性を持つように解釈しようとすることは、物語の魅力を損ないかねない。
時系列的な捉え方をすることや、今の時代に当てはめて考えることそのものが、わたしたちの「そのまま受け入れる力」の欠如を示すことになりかねない。

時間は存在するのか否か。
時間は有限か無限か。
時間は直線的か、それとも環状か。

少なくとも人間にとって、時間とは直線的であると同時に環状であり、同時的であろう。

著者が60年も前に執筆した物語がいまだに新鮮な響きで読まれているのには驚くしかないが、
同時に人間という、たった100年ほどしか生きられない者たちにとっての「時間の流れ」などというものは、
宇宙から見ると「静止」あるいは「無」に等しいものなのかもしれないと思い知らされる。

外界は、ついに、その想像上の魅力を失った。P12

外へ外へと好奇心、探究心を追求した人類の行き着く先がこのように描写されている。
わたしたちは、そろそろ「想像力」の権利を取り返してもいいころではなかろうか。

淋しくないこと、びくびくしないことーボアズはこの二つが人生で大切なことだと考えるようになった。ほんとうの相棒は、ほかのなによりも役に立つものだ。P259

地球の人々をひとつにまとめるための計画に利用された人たちがいた。
このセリフの直後の、彼の言動に頭をぶっ叩かれた気持ちになった。

人生の目的は、どこのだれがそれを操っているにしろ、手近にいて愛されるのを待っている誰かを愛することだ、と。P445

人生を捉えることはできない。
なぜならそれは、わたしたちが作り出したものではないから。
けれど、その与えられた人生で、操られた人生で、わたしたちは自分のできることを精一杯するしかないのだ。

ブログ運営者

ちひろ
ことば、文字、文章。
それはとても恐ろしいものでもあり、うんと心強い味方でもある。

文字はマンガに劣り、写真は動画に劣ると言われる時代で、文字の集積だけがもたらしてくれる「情報」以上の無限の想像のための余白。
そんな文字の持つ力に心躍る方がいたら、ぜひ友達になってください。
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